血管平滑筋細胞オートファジーの動脈硬化における役割に関してはin vitroの報告が少数なされているのみである。しかし、オートファジーが動脈硬化のどの段階で誘導されるのかあるいは具体的にどのような役割を果たすのかなど不明な点が多い。特に、急性冠症候群の発症機序に重要なプラークの破綻などに血管平滑筋は重要な役割を果たしているという事実から、これらの状況で血管平滑筋細胞のオートファジーがどのような役割を担っているのかを解明することは重要である。この点を明らかにするために、今回、平滑筋特異的オートファジー(ATG7)欠損モデルマウスを作製し、動脈硬化モデルマウスであるapoE欠損マウスと交配させ、血管平滑筋特異的ATG7欠損apoE欠損マウスを作製した。このマウスに高コレステロール食を負荷するとコントロールマウスに比較して動脈硬化性病変の進行と胸腹部の大動脈瘤が発症することが確認できた。この作用機序に関しては現在検討中であるが、一つには血管平滑筋細胞においてATG7が欠損することにより、血管平滑筋細胞のアポトーシスが亢進していることを確認しており、この病態が動脈硬化を促進させ、結果として、動脈瘤の発症に関連していると考えている。 この研究を通じて動脈硬化における血管平滑筋細胞のオートファジーの新たな分子機構を発見することができ、ひいては、オートファジーをターゲットとした新しい動脈硬化抑制薬の開発につながる可能性があり、臨床上も極めて意義の高い研究になると自負している
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