血管平滑筋細胞におけるオートファジーの動脈硬化における役割を検討した。Atg7f/fマウスにSM22-Cretgマウスを交配し血管平滑筋特異的Atg7欠損マウス(SM22-Cre;Atg7f/f)を作製した。次に、SM22-Cre;Atg7f/fマウスとapoE欠損マウスを交配させ、平滑筋滑筋特異的Atg7欠損・apoE欠損マウスとコントロールapoE欠損(以下ATGKO、WT)を作製した。10週令のこれらのマウスに14週間の高コレステロール食を負荷し、動脈硬化における血管平滑筋細胞のオートファジーの役割を検討した。経過中、WTに比較して、ATGKOでは有意に死亡数が増加した。両群間で、体重、血圧や脂質代謝に大きな差を認めなかったが、WTに比較してATGKOでは、腹部大動脈領域の血管径の拡張と著明な動脈硬化層の進展を認めた。そこで、ATGKOとWTの腹部大動脈領域の切片を作成し、アポトーシスやネクローシス、fibrous capの厚さ、脂肪沈着、コラーゲン線維、マクロファージ数などをHE染色や免疫染色等で比較検討した。その結果、腹部大動脈の中膜の平滑筋細胞数は低下し、カズパーゼ3陽性の平滑筋細胞がWTに比較してATGKOで有意に増加していた。次に、初代培養されたATGKOとWTの血管平滑筋細胞を用いて、酸化ストレス(H2O2)を負荷した際のアポトーシスの変化をアポトーシスに関わるシグナルの蛋白レベルをウエスタンブロット法で解析することによりメカニズムの検討を行った。その結果、H2O2を負荷するとWTに比較してATGKOマウスではアポトーシスに関わるシグナルが亢進していた。これまでのデータをまとめると、血管平滑筋細胞におけるオートファジーは、高コレステロール血症などによる酸化ストレスの増加による平滑筋細胞のアポトーシスに対して保護的に作用し、動脈硬化の進展を抑制する可能性がある。
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