研究課題
In vivoにおける検討前年度までにマウスAAA病変において、血管内皮細胞特異的カルパスタチン(CAST)の導入により新生血管の成熟が促進される傾向が認められた。しかし、マウスAAAモデルでは新生血管の密度が低く、病的血管新生について精度の高い検討を行うのは難しい。そこで、担癌モデル(ルイス肺癌細胞移植実験)ならびに酸素誘発性網膜症モデルを用いた病的血管新生の検討を行った。両モデルにおいて、血管内皮特異的なCASTの導入により病的血管新生が抑制され、担癌モデルの場合は腫瘍の縮小が認められた。同時にCASTの導入により血管内皮における血管内皮成長因子-C(VEGF-C)の発現低下が認められ、同細胞のJAK/ STAT3経路の下方制御ならびに同経路の内因性阻害因子Suppressor of cytokine signaling3(SOCS3)の発現増加が認められた。また、野生型マウスにおける酸素誘発性網膜症は、VEGF-C中和抗体の硝子体内投与により抑制されることを確認した。In vitroにおける検討酵素実験の結果、カルパインはSOCS3のPEST配列を認識し、これを直接切断・分解することが明らかとなった。培養血管内皮細胞においてsiRNAを用いてCAST発現を低下させたところ、IL-6によるSOCS3の誘導が抑制され、JAK/STAT3経路が亢進し、その標的遺伝子であるVEGF-Cの発現が上昇した。また、培養血管内皮細胞のIL-6誘発性管腔形成はCAST欠損により亢進し、これがJAK/STAT3/VEGF-C分子軸に依存することを確認した。したがって、カルパインシステムはVEGF-Cのオートクラインループを介して病的血管新生を潜在的に促進しており、同システムをターゲッティングすることにより病的血管新生を効率的に抑制することができる。【Miyazaki T. et. al., Circ Res 2015】
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Circulation Research
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http://www10.showa-u.ac.jp/~biochem/Takuro_Miyazaki/Takuro_Miyazaki.html