研究課題/領域番号 |
24790785
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
芦野 隆 昭和大学, 薬学部, 助教 (00338534)
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キーワード | 動脈硬化 / 血管内膜肥厚 / 酸化ストレス / Nrf2 / 血管平滑筋細胞 / 血小板由来増殖因子 |
研究概要 |
本申請研究は、生体内レドックス状態の調節を担っている転写因子Nrf2の血管内膜肥厚抑制における役割の解明を目的としている。平成24年度は、血管平滑筋細胞(VSMC)において、Nrf2のノックダウンが血小板由来増殖因子(PDGF)刺激による細胞の活性酸素種(ROS)レベル上昇を持続させ、細胞遊走を亢進させることを明らかにした。さらに、血管傷害後の内膜肥厚がNrf2遺伝子欠損(KO)マウスで増悪することを見出した。引き続き平成25年度は、Nrf2の血管内膜肥厚抑制作用およびVSMC遊走抑制作用メカニズムについて以下の点を明らかにした。 1.PDGFによるRac1およびp44/42 MAPキナーゼ(ERK)活性化におけるNrf2の役割 NADPHオキシダーゼの構成分子であるRac1は、VSMCにおいてROS産生およびラメリポディア形成を介した細胞遊走を担っている。そこで、siRNAを用いたNrf2阻害実験を行った結果、PDGF刺激によるRac1活性化が増強した。さらにPDGFの細胞内シグナル伝達因子の1つであるERKのリン酸化を検討したところNrf2のノックダウンにより活性化の持続が認められた。 2.新生内膜におけるERK活性化および細胞増殖におけるNrf2の役割 マウス大腿動脈にワイヤー傷害を施し、7日後の新生内膜形成部におけるERKの活性化を調べた結果、Nrf2-KOマウスにおいてERKの著しい活性化が認められた。一方、Wild-type(WT)およびNrf2-KOマウス大腿動脈にワイヤー傷害を施し、4週間後の新生内膜部の細胞数を測定し比較したところWTマウスおよびNrf2-KOマウスの間に細胞密度の差は認められなかった。 以上の結果から、Nrf2はPDGFによるRac1を介したROS産生およびERKシグナル伝達系の調節を介して血管新生内膜形成に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度までの検討において、ガイドワイヤーを用いた大腿動脈内皮剥皮モデルを用いて、血管傷害後の内膜肥厚におけるNrf2の役割について検討を行ってきたところ、WTマウスと比較してNrf2-KOマウスで新生内膜肥厚が有意に増悪し、その内膜肥厚過程初期で血管平滑筋細胞におけるNrf2量の増加およびERK活性化の亢進があることを明らかにした。さらに血管内膜傷害後の内膜肥厚に重要な役割を果たしているPDGFによるVSMC遊走におけるNrf2システムの機能的意義について検討したところ、Nrf2システムがNADPHオキシダーゼの構成分子Rac1の活性化およびROS消去に関与し、VSMC遊走を抑制的に制御していることを明らかにした。以上の結果から、血管傷害後の内膜肥厚抑制にNrf2が関与することをin vivoで実証し、さらにVSMCにおけるNrf2のROS制御機能についてもほぼ実証できた。 これらの発見は、動脈硬化の引き金になる血管内膜肥厚の抑制にNrf2による酸化ストレスの制御が重要であることを示唆している。平成26年度は、VSMC増殖におけるNrf2の役割およびVSMC以外の細胞群制御におけるNrf2の役割について課題となってくるが、現在まで順調に研究は進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの検討において、Nrf2欠損による血管新生内膜肥厚の増悪は、VSMC遊走の亢進が関与していることが1つの要因であることを明らにした。一方で、内膜肥厚は、VSMCの増殖およびアポトーシスのバランスの破綻も関与することが報告されている。そこで、今後はVSMCの増殖およびアポトーシスにおけるNrf2の役割についての検討を行う。具体的には、Nrf2 siRNAによるNrf2ノックダウン細胞、Nrf2を負に制御するタンパク質Keap1のsiRNAによるNrf2強活性化細胞を用いて、VSMC増殖およびアポトーシスにおけるNrf2の役割を、BrdU取り込み、Annexin V/Propidium iodide染色およびTUNEL染色を基本手技として実験を進めていく。またNrf2-KOマウスを用いて、新生内膜形成段階におけるVSMCのアポトーシスをTUNEL染色で検出し、WTマウスと比較する。 さらに、動脈硬化発症と進展に関与する単球/マクロファージの血管傷害部位への接着・遊走におけるNrf2の役割を明らかにするために、傷害血管における単球/マクロファージをF4/80染色で検出し、WTとNrf2-KOマウスを比較する。またWTおよびNrf2-KOマウスから単離した単球/マクロファージを用いて、細胞遊走アッセイや一酸化窒素合成酵素および炎症性サイトカイン産生の影響におけるNrf2の関与について検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費の支出として当初予定していた実験動物の購入が、所属機関の動物施設内の繁殖により多くまかなわれたことなどから減少したため減額となった。また、研究成果発表のために旅費の支出を計画していたが、学会への参加を見合わせた。以上の理由などのため実支出額が予定よりも減額する結果となった。 Nrf2-KOマウスの繁殖維持費およびWTマウス購入費、遺伝子発現を測定するためのリアルタイムPCR用試薬、タンパク質発現を測定するための抗体や各種生化学用実験試薬類の消耗品の購入については、従来の計画通り平成26年度の研究費をあてる。 また、繰り越された研究費については、本研究を進行するにあたり、新たに必要となった細胞増殖およびアポトーシス検出に必要な試薬およびサイトカイン類の濃度測定用ELISAキット等に当てる予定である。
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