研究概要 |
梗塞後心筋リモデリングは心不全の要因であり、急性心筋梗塞の予後の増悪因子となる。梗塞心筋にはT細胞主体の炎症細胞浸潤を認め、梗塞後心筋リモデリングの病態に炎症が増悪因子として関与することが示されている。Th17細胞は、近年注目されている新たなエフェクターT細胞であり、炎症性サイトカインであるインターロイキン17(IL17)を産生する。本研究の目的は、IL17欠損マウス(IL17-KO)を用いて、梗塞後心筋リモデリングにおけるIL17の役割を明らかにし、IL17が梗塞後心筋リモデリングの治療標的となり得るかを検証することである。 IL17-KOマウスを用いた梗塞後心筋リモデリングの表現型の解析:IL-17KOマウスは野生型マウス(WT)と比較し、死亡率の著明な減少を認めた。心エコー図検査ではIL-17KOマウスはWTと比較し、左室収縮能低下や心拡大が抑制されていた。梗塞後の左室重量ではIL-17KOマウスはWTと比較し、左室重量/体重比は低値であった。 IL17-KOマウスにおける梗塞後心筋リモデリング軽減の機序の解析:梗塞後組織での好中球(Ly6G)、マクロファージ(Iba1)の組織免疫染色を行った。IL-17KOマウスはWTと比較し炎症細胞浸潤が抑制されており、心筋梗塞後のリモデリングに炎症細胞浸潤が関与していることが示唆された。RT-PCR、マイクロアレイ解析では、IL-17KOマウスはWTと比較し梗塞後MMP-9, MMP-13の発現抑制を認めた。心筋梗塞後IL17産生細胞の同定:IL17レポーターマウスを用い、心筋梗塞後の組織免疫染色(CD4, CD8, TCR-γδt)を行い、IL-17産生に関わるT細胞の同定を行う。IL17レポーターマウスとは緑色蛍光タンパク質(GFP: green fluorecent protein )をIL17遺伝子に連結している遺伝子改変マウスである。 現在臨床研究を行っており、ヒト心筋梗塞後の血清を採取している。今後IL17関連サイトカインと心筋梗塞後リモデリングとの関係を検討していく。
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