平成26年度は、調製したマウスの左心室サンプルを、ウェスタンブロット実験で解析した。心不全のバイオマーカーであるBNPを測ったところ、野生型(WT)マウスと比べ、心筋トロポニンT S179Fノックイン(KI)マウスのBNP発現レベルは増加することが分かった。また、カルシウムポンプであるSERCA2aの発現量において、S179F KIマウスはWTより低下している。更に、S179F KIマウスのホスホランバン(PLB)のリン酸化レベルはWTより低下しており、SERCA2aの活性が抑制されているが明らかにした。即ち、筋小胞体へのカルシウムの取りこみ機能はダウンレギュレションしているが明らかになった。このことはS179F KIマウスのカルシウム感受性の増加に対する一つの重要な代償機序だと考えられる。しかしながら、心エコー(E/A)及び心カテテール法(dP/dtmaxとdP/dtmin)によって左心室の拡張能を評価した結果、S179F KI マウスの方は収縮能が良好であることに対し、拡張能が低下していることが明らかとなった。このことから、心筋トロポニンT突然変異S179Fによるカルシウム感受性の増加に対し、筋小胞体へのカルシウムの取りこみ機能のダウンレギュレションは完全的に代償できないことが示唆されている。
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