研究課題/領域番号 |
24790793
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
堀 美香 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (60598043)
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キーワード | ニューロメジンU / 動脈硬化 / 炎症 / 脂肪性肝炎 / コレステロール |
研究概要 |
本研究では、慢性炎症のkey molecule として、ニューロメジンU(NMU)に着目し、NMU のメタボリックシンドローム及び慢性炎症を介した動脈硬化発症及び進展への関わりとそのメカニズムについて明らかにすることを目的とし、NMU-KOマウスとApoE/NMU-KO (DKO)を用いて解析を行った。平成24年度までの解析により、高脂肪食負荷 ApoE/NMU-KO (DKO) マウスは、ApoE-KO マウスに対し血清総コレステロール (Cho) 値は2倍という非常に高値を示したが、20 週齢時の大動脈組織切片の解析ではプラーク面積に差は認められなかった。本年度は、ApoE-KOとDKO マウスの血清Cho値の違いの原因を明らかにするため、NMU-KO及びDKOマウスにおいて、肝臓、小腸における脂質代謝に着目した。20週齢時では、各マウスにおける肝組織切片の解析から、WT 及びNMU-KOマウスは脂肪性肝炎を発症するが、ApoE-KO及びDKO マウスでは脂質を取り込んだ泡沫化マクロファージが多数出現するのみで、脂肪肝を発症しないことが明らかになった。また、DKO マウスでは、9、13週齢において、Cho代謝関連転写因子SREBP2及びその制御下にある LDL受容体 (LDLR)の発現がApoE-KO マウスに比較して低下していた。また、小腸においても LDLR の発現が低下していたことから、DKOマウスは、ApoE-KO マウスに比較し、各組織の LDLR からのCho取り込み低下により、血清脂質が上昇することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMU-KO マウス及びDKO マウスの病態解析から、NMUの脂肪性肝炎及びコレステロール代謝との関連について明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)NMUの脂質代謝、炎症と全身臓器との関連の検討 本年度に解剖したマウスから、膵臓、脂肪(腹部、皮下、褐色)、骨格筋、小腸、大腸のホルマリン固定標本及び凍結サンプルを得た。これらのサンプルを用い、糖代謝、エネルギー代謝に加え、特に炎症関連遺伝子等の発現解析を行い、NMUと炎症との関連について調べる。また、本年度の成果により、肝臓においてNMUとの関連が示唆されたSREBP2、LDLR 等に加え、新たに得られた遺伝子をターゲットとし、ヒト肝細胞HepG2、小腸細胞 CaCO2、免疫細胞THP1等を用いて、NMU の添加もしくは発現抑制時に、脂質添加、炎症刺激を行い、NMU と脂質、炎症との関連について細胞レベルにて解析する。 (2)NMU とマクロファージ、血管内皮、平滑筋細胞との関連の検討 ヒト免疫細胞株、血管内皮細胞株、血管平滑筋細胞株に対し、NMU の添加もしくは発現抑制時に、脂質添加、炎症刺激を行い、NMUと細胞の形質転換、脂質の取り込み、増殖、分化への影響について、蛋白質及び遺伝子発現解析により検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
DKO マウス及びApoE-KO マウスを用いた骨髄移植実験は今年度に行う予定であったが、脂質代謝や脂肪性肝炎の病態解析を優先したため、次年度への持ち越し金が発生した。 DKO マウスとApoE-KO マウスの20週齢における動脈硬化性病変を評価したところ、進展が同程度であったことから、DKO マウスの骨髄を移植したApoE-KO マウスにおいて、ApoE-KO マウスに比較して血清コレステロール値、動脈硬化性病変の変化について確認する。ドナーである6週齢のDKO マウス及び ApoE-KOマウスに放射線照射を行い、DKO マウス、ApoE-KO マウスから採取した骨髄細胞を尾静注し、高脂肪食を負荷し、115週齢まで飼育する。各マウスの大動脈及び血清を採取し、動脈硬化性病変の組織学的解析及び血清脂質測定を行う。
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