肺移植目的に手術により摘出された慢性閉塞性肺疾患(COPD)肺4例と対照ドナー肺4例より、1例につき肺組織を5~8ヶ所より採取し、それらより凍結切片を作成して、マクロファージ、好中球、好酸球、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、B細胞、NK細胞、I型コラーゲン、III型コラーゲン、総コラーゲンについて免疫組織化学染色ならびに化学的染色を施行し、肺胞領域ならびに細気管支壁の両者で定量した。多変量解析による検討を行ったところ、肺気腫の程度(肺胞表面積の減少)には肺胞領域のB細胞とCD4陽性T細胞の増加が有意に関連し、また細気管支壁の肥厚には炎症細胞の浸潤よりもむしろ細気管支壁内の総コラーゲンの減少、I型コラーゲンの増加が有意に関連することを見出した。 また、多光子励起顕微鏡を用いた第二次高調波発生(second harmonic generation; SHG)の前方直進成分(forward SHG)と後方直進成分(backward SHG)とを同時に評価することで、ヒトの肺胞領域においてI型コラーゲンは主にSHGの前方直進成分のみで反映され、III型コラーゲンはSHGの前方直進成分ならびに後方直進成分の両者にて検出されることを見出し、SHGシグナルを定量することで両者のコラーゲン亜型の定量的検出が可能となることを見出した。 さらに、細気管支と肺胞組織をlaser capture microdissection法を用いて選択的に採取し、その各組織における網羅的遺伝子発現をマイクロアレイにて解析した。その結果、肥厚した細気管支壁ではTGF-β signaling pathwayに関わる遺伝子発現の低下を認めた。 以上より、COPD肺の組織リモデリングにおける慢性炎症と細胞外基質の変化、さらには網羅的遺伝子発現の変化との関わりについての重要な知見を得られた。
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