研究課題/領域番号 |
24790800
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
太田 洋充 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (40451562)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 急性呼吸不全 |
研究概要 |
本年度は、実験計画に基づき、ラット・マウス等による肺胞上皮細胞の初代培養細胞を利用した実験系を作成することを目指した。マウスの肺から血管内皮細胞と血球細胞に対する抗体を利用し、ネガティブセレクションを利用した肺胞上皮細胞の初代培養細胞を作製したが、肺胞上皮細胞の回収効率は不良で、マウスを2-3匹使用しても実験を行うために十分な細胞を回収しえなかった。そのため、メトリザマイド比重遠心法をもちいてラットの肺から肺胞上皮細胞を回収したところ、実験を行うために十分な細胞を回収が可能であった。 次に、回収した細胞を用いて、RT-PCR法により、タイトジャンクション関連タンパクの発現状況を確認した。同時に、初代培養細胞を用いて、抗体染色を行い、タイトジャンクション関連タンパクの発現と細胞における分布を確認した。代表的なタイトジャンクション関連タンパクであるZO-1 やOccludinについては発現が確認されたが、一方で、研究者が注目しているclaudin-18については、初代培養細胞では発現が弱く、しかも経時的な発現の低下が観察された。肺胞上皮細胞から分泌されるサーファクタントプロテイ、SP-D、SP-Aでも同様な現象が観察され、初代肺胞上皮細胞の上皮細胞としての性質が、in vitroでは喪失するためと思われる。 現在、コラーゲンやフィブロネクチン等などを利用し、或いは間葉系細胞と共培養することにより、肺胞上皮細胞の性質を維持できるか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、将来の実験動物での解析を考え、マウスの肺胞上皮細胞による検討を行ったが、予想以上に細胞の回収率が不良で、マウスの肺胞上皮細胞を用いた実験系を作成できなかった。ラットの肺に変更後、比較的、スムーズに実験は進んだが、所属する研究施設を移動したこともあり、実験再開に時間を要した。また、初代培養細胞でも生体内における肺胞上皮細胞から性質が変化しており、肺胞上皮細胞としての性質を保持させる培養条件の検討に予想外の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実験の結果、肺胞上皮初代培養細胞の分離、培養の方法には一定のめどがついたため、引き続き、ラットの肺から分離された肺胞上皮初代培養細胞を用いて、MHGB1に対する反応を肺胞上皮細胞の初代培養細胞を用いて検討する。また、我々の研究グループの成果により気道上皮細胞の障害に対する耐性に、糖タンパクである、ムチン(MUC4)の遺伝多型が関係してすることが報告された。気道上皮細胞の機能と恒常性の維持のための、気道上皮細胞におけるムチン(MUC4)の役割もあわせて検討する、
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究計画の遅れから、気道上皮細胞の初代培養細胞を使用した、HMGB1等の新たな炎症性サイトカインに対する、上皮細胞の反応や上皮細胞のバリア機能への影響が十分に検討できていない。そのため、本来、初年度に行う方針であったマイクロアレイによる網羅的な解析を含めた、HMGB1による遺伝子発現の変化の検討を行う。また、上皮細胞をフィルター上で培養し、細胞シートの電気抵抗の測定による上皮細胞のバリア機能の評価を行う。本年に繰り越した研究費は、マイクロアレイの解析費用や、電気的な抵抗を測定するための細胞培養用のフィルターやコラーゲン、フィブロネクチンなどの購入費用に使用する。 本来なら、本年度は実験動物を使用した検討を予定していたが、実験計画に遅れのため、実現が困難となった。そのため、動物実験を行う変わりに、気道上皮細胞のムチン(MUC4)の遺伝多型が、上皮細胞のストレスへの抵抗性に関与する機序の解明を行う。また、ムチンの遺伝多型が上皮細胞のバリア機能に対する影響するかどうか検討する。動物実験に使用する予定であった研究費はそのための費用とする。具体的には、ヒト肺の手術検体から気道上皮細胞の初代培養細胞を作製し、MUC4の遺伝多型による気道上皮細胞の機能の変化を検討する。研究費は、ムチン(MUC4)の遺伝多型の解析費ヒト肺からの気道上皮初代培養細胞の作製費用にも使用する。
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