肺胞上皮細胞と血管内皮細胞によるバリアは、肺胞腔内の恒常性の維持に重要と考えらえる。バリア機能の障害は、肺胞腔内への液体成分の漏出による呼吸不全や病原体の侵入につながる。肺胞上皮細胞のバリアを維持する機構としてtight junctonとその主要な構成分子であるclaudinに注目して研究をすすめた。これまでの研究から肺胞上皮細胞に強く発現するclaudinとしてclaudin-18を同定した。間質性肺炎急性増悪時やびまん性肺障害時に重要とされる炎症性サイトカインHMGB1が肺胞上皮細胞claudin-18の発現を抑制すると考え実験を計画した。ラットの肺から肺胞上皮細胞を回収し初代培養を行い、初代培養細胞でclaudin-18が発現していることを確認した。また、マウスの細胞株であるMLE-12にclaudin-18を発現させた細胞を作成した。しかし、アメリカ胸部疾患学会において他グループの研究が公表され、claudin-18のノックアウトマウスは、明らかなフェノタイプを示さなかったことが報告された。当初の予想と異なり、肺胞上皮細胞においてclauidn-18がバリアとして働いていないことを意味し、cluaidn-18に関する実験を中止した。代わりに、本研究グループで新しく同定した、びまん性肺障害の原因遺伝子であるMUC4に対するびまん性肺障害時にどのような影響をうけるかについて研究する方針とした。HMGB1、TGF-βといったサイトカインが肺胞上皮細胞にどのような影響を与えるか検討した。
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