研究課題/領域番号 |
24790806
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
坂上 拓郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (00444159)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 組織幹細胞 / 間質性肺炎 / 分化 |
研究概要 |
本研究は現在までに原因不明とされる肺線維化の進展機序に対して、今までの炎症を主体とした考えからは全く異なる、肺組織幹細胞の分化異常という観点からの機序解明を試みることを命題として進められている。本年度はヒト検体を用いた研究としてはその予備段階としての当施設で診療を行われている例に関しての臨床情報を含めたデータベース化を進めた。基礎疾患別に症例を選別し、今後の解析の進行に備え、各種の検査所見、画像所見を合わせたファイリングを進めている。 また、マウス用いた研究としては肺線維化モデルとして最も一般的であるブレオマイシン誘発肺線維症モデルを用いて、同モデル肺において組織幹細胞マーカーであるCD133(Prom1)陽性細胞が集簇することを確認した。ブレオマイシン投与後の肺では投与3日よりCD133陽性幹細胞の集簇が認められ、投与一週間頃をピークに二週間程度継続することが確認できた。コントロールである生理食塩水のみを投与したマウスではこの変化は認められなかった。また、同細胞の免疫学的除去を試みるために肺内からの分離を試みた。具体的にはブレオマイシンを投与した一週間後のマウス肺をコラゲナーゼ処理し細胞を遊離し、CD133抗体による標識を行ったのちに磁気ビーズの結合した二次抗体を用いて、ミルテニー社のMACS法を用いて同細胞の単離を試みた。一回の精製では目的の細胞純度は得られなかったために複数回のカラム精製を行った。精製度の確認としてはフローサイトメトリーを用いた。最終的に目標とする精製度のCD133陽性細胞の単離が得られた。 上記の結果を踏まえ現在は単離細胞の免疫担当細胞への抗原提示の可否を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・マウスを用いた研究に関してはおおむね予定通りに進展が得られている。CD133陽性細胞の抽出の技術的確認は得られた。次年度からはその役割に解明に向けて、免疫学的除去を行うべく実験を継続する。 ・ヒト検体を用いた検討はデータベースの確認作業が進行中である。今後は定期的に通院している例の抽出を行い同意のもとに検体の採取を行う。またヒト検体においても末梢血中、肺組織中のCD133陽性細胞の実験的抽出を行う予備実験を開始する。
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今後の研究の推進方策 |
・マウスを用いた研究では、次年度においてはCD133陽性細胞の免疫学的除去を試みる。骨髄より採取した細胞を抗原提示細胞に分化させ、静止状態、または炎症惹起状態でのCD133陽性細胞の細胞抗原を認識させる系の確立を目指す。 ・ヒト検体を用いた研究では、引き続き症例の蓄積と抽出を進める。また特に末梢血中におけるCD133陽性細胞の抽出法の確立を目指す。これにより、病状や病勢による同細胞の果たす役割を推測する。また肺生検標本における同細胞の局在や役割を解明さるために、同抗体を用いた免疫染色や、遺伝子発現解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、抗体をはじめとした各種試薬の購入を行う。また今年度は行わなかった遺伝子発現解析を外注にて依頼する予定である。旅費としては日本呼吸器学会と、アメリカ胸部疾患学会でのこの分野における研究の進展状況を確認し情報交換を行うために参加する。
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