本研究は原因不明とされる間質性肺炎の結果として起こるとされていた肺線維化の進展機序に対して、今前の炎症をベースとした理論からは全く異なる、肺組織幹細胞の分化以異常が結果を生ずるという視点から研究が計画され進められた。当初マウス間質性肺炎モデルを用いた動物実験と、ヒト肺生検検体を用いた網羅的解析が当初計画された。 ヒト検体を用いた研究では、当施設における間質性肺炎例のデータベース化を進めた。 マウスを用いた研究では、間質性肺炎モデルであるブレオマイシンを肺内に投与し実際に肺内に組織幹細胞マーカーであるCD133陽性細胞がday7-14にかけて増加することを、フローサイトメトリーを用いて確認した。次に、肺組織からのCD133陽性細胞の抽出を試みた。MACSシステムを用いて、磁気反応性の抗CD133抗体の認識した肺組織内の細胞を抽出した。複数回のカラム抽出を繰り返すことにより純度の高いCD133陽性細胞の抽出が可能となった。 同細胞を用いて、肺内のCD133陽性細胞を免疫学的機序を用いて除去するために、CD133認識抗限定細胞の作製を行った。マウス骨髄よりGM-CSFを用いて抗原提示細胞を誘導した。肺内CD133陽性細胞にUV照射を行いアポトーシスを誘導した。同細胞群をマウス抗原提示細胞を共培養し、肺内CD133認識抗原提示細胞を誘導した。本細胞をマウスの皮下にワクチンした。投与後7日に同マウスにブレオマイシン投与を行い、肺炎症、間質性肺炎を惹起した。その結果として、同抗原提示細胞をワクチンした群では、個体の体重減少が継続し、通常は第3週以降で回復してくるモデルが、以後も体重減少が続いた。またday21に行った、肺胞洗浄ではコントロールマウスと比較して炎症細胞の増多等の所見は見られず、炎症とは異なる機序による個体の変化が生じていることが示唆された。
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