研究課題
我々は肺癌幹細胞特異的に発現する遺伝子を探求するため、癌幹細胞を選択的に培養する方法として知られている各種成長因子を添加した無血清培地での足場非依存性培養による細胞塊(sphere)形成を肺癌細胞株の一つであるHCC4006株に対して行い、マイクロアレイを用いた発現解析にて通常培養とのmRNAレベルでの比較を行った。sphere形成細胞では肺で特異的に発現しているSFTPA2遺伝子の発現が約6000倍に上昇していた。不死化ヒト正常気道上皮細胞を含む16の肺癌細胞株において、通常培養を行った場合の2遺伝子のmRNAレベルでの発現を解析したところ、多くの細胞株で本遺伝子は低発現であった。この中でHCC4011細胞株に対しsphere形成を行うと、HCC4006同様本遺伝子の発現は上昇していた。一方、HCC4006細胞株を、sphere形成培養と通常培養を行い、マイクロRNAの発現を比較したマイクロアレイにおいて、miR-125bの発現が低くなっていた。miR-125bはweb上のでデータベースにおいて、SFTPA2遺伝子をターゲットとしているため、miR-125bは肺癌幹細胞に抑制的に働く可能性を考えた。miR-125bをHCC4006細胞株に遺伝子導入あるいはそのinhibitorで発現を抑制したところ、増殖能はむしろ増加し、inhibitorにて増殖能の抑制がみられた。sphere形成能には大きな差を見いだせなかった。今後マイクロアレイから得られた他のマイクロRNAの影響、SFTPA2遺伝子の抑制や、強制発現によりどのような表現型が得られるか、さらに検討が必要である。
すべて 2013
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Cancer Sci
巻: 104(2) ページ: 171-7