研究課題/領域番号 |
24790814
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
後東 久嗣 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (00437641)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肺サーファクタント蛋白 / 肺がん |
研究概要 |
これまでの検討で、SP-Aを強制発現させたヒト肺腺がん細胞株 (PC14PE6/SP-A)をヌードマウスに接種すると、産生される肺転移および胸水産生がベクター導入株 (PC14PE6/ pMIG)と比較して減少することが判明し、強制発現株による腫瘍内には有意に多数の腫瘍関連マクロファージ(TAMs)が浸潤していることを見出した。これを受けて、平成24年度はがん進展に重要な役割をもつTAMsにがん細胞由来のSP-Aがどのように関わるか、主に免疫染色を用いてそのメカニズムを解析した。TAMsには、その生物学的機能からM1(抗腫瘍性マクロファージ)とM2(腫瘍促進性マクロファージ)に分かれ、これらのバランスががん進展において重要であると理解されている。SP-A強制発現株による腫瘍内で集積が増加したTAMsがどちらのバランスに傾いているのかを検討するために、腫瘍組織切片を用いて免疫染色を施行した(M1マクロファージはTNF-αで、M2マクロファージはMRC1で染色した)ところ、SP-A強制発現株による腫瘍組織内ではM1の数が有意に増加しており、M2の数には変化がなかった。また、SP-A強制発現株腫瘍ではNK細胞誘導因子であるIFN-γやCCL5の発現も亢進していたため、免疫染色にてNK細胞数を検討したところ、SP-A強制発現株腫瘍にて有意にNK細胞数が増加していた。さらに、NK細胞の細胞障害活性の指標であるパーフォリン1やグランザイムBの発現もSP-A強制発現株腫瘍で増加していた。これらの結果から、SP-Aは腫瘍内マクロファージの極性をM1優位に調節することでNK細胞を誘導し、抗腫瘍効果を発揮すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、SP-Aは腫瘍内マクロファージの極性をM1優位に調節することでNK細胞を誘導し、抗腫瘍効果を発揮することを主に免疫染色手法を用いて検証した。 今後、in vitroにおいてSP-Aがどのような機序でマクロファージの極性を調節し、あるいはNK細胞の活性化を誘導するのか、について重点的に検討する予定である。 当初の予定はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、in vitroにおいてSP-Aがどのような機序でマクロファージの極性を調節し、あるいはNK細胞の活性化を誘導するのか、について重点的に検討する予定である。 具体的には、チオグリコレートを腹腔内投与後に採取したマウス腹腔マクロファージもしくは末梢血から採取したヒト単球、あるいはマウス脾臓から採取したNK細胞に、ヒト肺胞蛋白症症例の気管支肺胞洗浄液より遊離したヒトSP-Aを作用させ、exogenous SP-Aがこれらの細胞に与える影響を検討する。細胞運動能はboyden chamberを用いて、サイトカインプロファイルはPCR arrayを用いて検討する。 また、SP-Aノックアウトマウス(C57BL/6 origin)における肺がん転移の検討を行う。細胞株はC57BL/6 originであるLewis lung carcinoma株を用いる。この細胞株はC57BL/6に経静脈的に投与すると肺転移を形成することが報告されている。この現象を確認後、Lewis lung carcinoma細胞が形成する肺転移をWTマウスおよびSP-Aノックアウトマウスで肉眼的および免疫組織学的に比較検討する。これにより、宿主側SP-Aの肺がん進展における重要性を検証できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
In vitro研究用としては、細胞培養に関連する消耗品(ピペット、フラスコ、培養液等)やPCR関連キット、試薬等が必要である。 In vivo研究用としては、マウス維持費用、転移モデル作成に関わる消耗品(シリンジ、フラスコ等)、免疫染色用キット、試薬等が必要である。 また、研究成果を国際学会(米国)で発表予定であるためその旅費が必要である。
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