研究課題
これまでの検討で、SP-Aを強制発現させたヒト肺腺がん細胞株(PC14PE6/SP-A)をヌードマウスに接種すると、産生される肺転移および胸水がベクター導入株(PC14PE6/vector)と比較して減少することが判明し、強制発現株における腫瘍内には有意に多数の腫瘍関連マクロファージ(TAMs)(特に抗腫瘍作用を持つM1マクロファージ)や、NK細胞が浸潤していることを見出した。これを受けて、平成25年度ではSP-Aがこれらの細胞にどのように関わり腫瘍進展抑制効果を発揮するか検討した。In vitroにおいて、様々な単球/マクロファージやNK細胞にSP-Aを作用させたところ、マウス腹腔マクロファージではCCL5やIL-1β等のM1マクロファージマーカーの増加が認められたが、興味深いことにマウス肺胞マクロファージではこれらの発現増加は認められなかった。また、マウスNK細胞もSP-A処理では活性化(perforin1やgranzymeBの発現増強)が認められなかった。さらに、SP-A処理した腹腔マクロファージでは遊走能の増強も認められた。これらの結果から、腫瘍から産生されたSP-Aは、肺に既に存在する肺胞マクロファージに作用するのではなく、血中の単球/マクロファージを刺激し、M1への分化や遊走能を惹起することで間接的にNK細胞を活性化して肺腺がんの腫瘍進展抑制に寄与することが考えられた。さらに、マウスからNK細胞を除去してPC14PE6/SP-Aの腫瘍進展をin vivoで解析したところ、NK細胞存在下ではSP-A強制発現株は腫瘍進展が抑制されていたにもかかわらず、NK細胞を除去することでその効果は失われた。この結果からSP-Aの腫瘍進展抑制効果は最終的にはNK細胞を活性化することで発揮されることが確認された。
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The Journal of Medical Investigation
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