研究課題/領域番号 |
24790819
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中島 剛 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (70328277)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 急性肺障害 / CTLA4 |
研究概要 |
急性肺障害は、自然免疫応答として長年研究されているが、いまだに有効な治療法がない。本研究では、獲得免疫の司令塔であるCD4陽性T細胞に着目し、特にCTLA4シグナル伝達を介した制御性T細胞(Treg)とエフェクターT細胞(Teff)の活性バランスの急性肺障害へ及ぼす病態生理的意義を検討している。本年度は、免疫抑制剤の中でもTreg誘導作用のあるラパマイシンのT細胞活性とそのシグナル伝達経路に迫った。 まず、LPS気道内投与モデルにラパマイシンを腹腔内投与し、肺の炎症が減弱することを示した。同時にT細胞活性のマーカーであるCD69、CTLA4発現量が減少したことより、ラパマイシンがT細胞活性を介してLPS誘導炎症を減弱すると考えられた。興味深いことに、同じ免疫抑制剤であるシクロスポリンには炎症減弱効果は認めなかった。TeffはmTORシグナル依存性に活性化するのに対し、Tregにはラパマイシン耐性の機序があるため、低用量ラパマイシンではTregを誘導するとされ、移植免疫において期待されている。急性肺障害においても低用量ラパマイシンが有効である可能性が示唆された。 次に、マウスの脾細胞を用いて、BrdUアッセイにて解析し、ConA+LPS刺激後の細胞増殖がラパマイシンによって抑制されることを示した。T細胞の活性化シグナル伝達分子であるNFAT、NFkB、CREB、AKTなどをreal-time RT-PCRで解析し、ラパマイシンにより、CREBの発現が増加していることが分かった。CREBはcAMPシグナル伝達の下流分子であり、cAMPはCTLA4と関連があるため、ラパマイシンがCTLA4発現に影響を与えていると考えられた。 in vivo、in vitroの実験により、ラパマイシンの抗炎症作用はCTLA4シグナルを介していると考えられ、治療に応用できる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Tregを誘導する作用のあるラパマイシンを用いて、in vivo、in vitroの両面から急性肺障害への効果を検討する目的で実験を行った。更に掘り下げるべき課題はあるが、急性肺障害マウスモデル、及びマウスの脾細胞を用いて行った研究はほぼ予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、急性肺障害モデル、マウスの脾細胞を用いて、ラパマイシンの抗炎症作用について検討する。ラパマイシンがT細胞活性、特にTreg活性を介して急性肺障害の炎症を減弱している可能性を示したが、さらにTh17細胞などTeffの更なるサブセット解析を行う。 また、急性肺障害と診断された患者の血液、肺胞洗浄液などの検体を用いて、CD69、CTLA4などのT細胞活性マーカー、Th細胞関連のサイトカインを測定し、急性肺障害に有効なバイオマーカーを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。 本研究は、慶應義塾大学医学部内の研究室で行い、必要な設備、機器は使用可能な環境にあるため、必要経費はほとんどが消耗品購入費用である。研究に用いる材料は、主にマウスであり、マウスの購入や維持のための費用、マウスからの肺組織や肺胞洗浄液、脾細胞などの検体回収に必要な試薬、フローサイトメトリー用の抗体などを購入する予定である。
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