研究課題
EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌細胞株であるPC9細胞株の耐性株の樹立及びその耐性株において、既存の耐性化とは異なるFGF2-FGFR1のautocrineによるEGFR-TKI耐性化が起こっていることを示した。具体的には、耐性PC9細胞株においては、0.1-1uM程度のGefitinibのみでは細胞の増殖抑制がほとんど認められなくなっているが、FGFRの阻害剤であるPD173074やFGFR1やFGF2をknock downした際に、Gefitinibへの感受性が回復した。特にFGFR1をknock downした際には、通常の感受性株に近い程度まで感受性が回復することを確認した。また、Gefitinibのみでなく、PD1773074を同時に加えることで、EGFRの下流に当たるERKのりん酸化が阻害されることが分かっている。別な新たな耐性化の機序として、DNAメチル化による遺伝子抑制との関係についても調べており、これまで、klotho、S100P、ALDH3A1といった候補遺伝子がcDNAマイクロアレイを用いた網羅的なmRNA解析とInfiniumを用いた網羅的なDNAメチル化解析の統合解析結果から得られている。このうち、klothoはこれまで膵癌の薬剤感受性との関係が知られている遺伝子であり、耐性株においてもklothoのknock downにおいてわずかであるが、PC9感受性株がGefitinibに対して耐性化することが確認できている。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたPC9耐性細胞株におけるFGF2-FGFR1のautocrineの機序に関しては既にpaperにacceptされている。また、DNAメチル化とEGFR-TKI耐性化との関与に関してはklothoをはじめとした候補遺伝子に対する解析がすすみ、また、他の研究者が行っているHCC827の耐性株における同様な実験の結果と統合して解析することで、候補遺伝子の効率よい絞り込みが可能となっている。
PC9のEGFR-TKI耐性株及びHCC827のEGFR-TKI耐性株という2種類の細胞株を用いて解析を進めていく。具体的には、DNAメチル化による薬剤耐性との関与が考えられるklothoをはじめとした遺伝子群に関して、knock downや高発現モデルを作成することでその薬剤耐性化における役割について検討する。臨床検体を用いたFGF2-FGFR1のautocrine機序についての調査については、臨床検体を得られる機会が少ないことから、他施設との連携についても視野に入れている。
DNAメチル化解析に必要な試薬の購入費。細胞継代や薬剤感受性確認のため、遺伝子knock downのために必要な試薬の購入費。未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入にあてる予定である。
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Molecular Cancer Research
巻: 未定 ページ: 未定
10.1158/1541-7786