研究課題
本研究は、腎臓病を早期に発見するバイオマーカーを探索することを目的としている。慢性腎臓病(CKD)は、老廃物の排泄がうまくいかないことから、薬物や代謝物が血中に蓄積する。この原因として糸球体ろ過機能が低下することで引きおこると考えてきた。近年CKDにおいてトランスポーターの発現量および機能が変化するという報告が多くされている。SCL4C1は尿細管基底側に発現するorganic anion transporting polypeptideトランスポーターであるが、CKD患者で薬物や代謝物の他に尿毒症物質を尿へ排泄する役割を担っている。尿毒症物質であるグアニジノ化合物の排泄には、SLCO4C1が関与していることから、本研究ではグアニジノ化合物に着目している。これに加え、インドキシル硫酸(IS)のようなタンパク質結合型尿毒症物質が予後に影響するため、本研究ではISにも着目している。我々の研究では、CKD患者の中でも腹膜透析(PD)患者を対象とした。PD患者(約40名)の腹膜平衡化試験で得られるPD排液、血液、尿(約550検体)を回収し、LC-MS/MSで、グアニジノ化合物、タンパク質結合型尿毒症物質を測定した。LC-MS/MSで得られた結果を、患者の病態や残腎機能、臨床パラメーター、体成分データとの関連を調べ、マーカーとしての意義づけを行った。今回の結果から、血漿中のIS、メチルグアンジン濃度は、体内水分量、筋肉量、骨格筋量と有意な負の相関が認められた。この結果は、体内に蓄積したメチルグアニジンやISが筋肉量に影響を与える可能性を示している。本研究では、腎障害の早期発見マーカーを同定できなかったが、血漿中インドキシル硫酸およびメチルグアニジンが腹膜透析患者いおける栄養障害の指標となり得ることが示唆した。
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Am J Physiol Renal Physiol
巻: 308 ページ: F487-499
10.1152/ajprenal.00206.2014