研究課題/領域番号 |
24790835
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 成孝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30559430)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | Rac1 / アルドステロン / ミネラルコルチコイド受容体 / 糖尿病性腎症 |
研究概要 |
主に糖尿病性腎症モデルにおけるRac1の役割をin vitro、in vivoの系を用いて検討した。 in vitroにおいては腎由来細胞株を用いて、高グルコース刺激がRac1の活性化を介してMR活性化をもたらすこと、Rac1の阻害によりその効果が消失することを見出した。Rac1の活性化がグルコースによるMR活性化に必須であることをさらに確認するため、恒常活性型Rac1変異遺伝子のトランスフェクションがグルコース同様のMR活性化をもたらし、かつ恒常活性型Rac1変異遺伝子のトランスフェクション下ではグルコースのMR活性化作用が消失することを見出した。同様に優性阻害型Rac1変異遺伝子のトランスフェクションによってMR活性が抑制され、グルコースによるMR活性化作用が消失することを確認した。 in vivoにおいてはI型・II型糖尿病のいずれにおいても腎Rac1が活性化していることを見出し、Rac1阻害により腎障害が改善することを確認した。特にI型糖尿病モデルにおいてインスリン投与による腎Rac1活性の抑制を確認した。肥満を伴うII型糖尿病モデルマウスにおいては血中アルドステロンが高値にも関わらずRac1抑制により有意にMR活性が抑制され、腎障害が改善することを初めて見出した。 これらの内容を報告するための準備と修正を今年度は主に行っていたため、その他のモデルの検討には当初予定より遅延が生じた。Alb負荷による腎障害モデルなどを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖尿病性腎症モデルの論文化に手間取り、追加実験等に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
検討対象とする腎障害モデルの数を絞り更なる検討を行いつつ、新たなRac1あるいはMR系活性化機構に的を絞り、その解明と新たなMR系活性化抑制法の開発に注力するとともに、Rac1/MR系の作用についてより細胞特異的な解析に挑戦する。 またRAAS系が活性化したモデルにおけるMR活性抑制や、他のAIIに依らないアルドステロン分泌が亢進して、結果としてMR活性が上昇しているようなモデルに着目し、アルドステロンの不適切分泌のメカニズム解明も新たに挑戦する。特に肥満モデルにおいてアルドステロンの不適切分泌がRac1抑制によるMR活性の十分な抑制を阻害していると考えられたことから、肥満におけるアルドステロンの分泌制御異常の原因の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記目標達成のために種々の腎炎モデルの作成とその解析、あるいは培養細胞を用いた検討に使用する。新規物質の発見が見込める場合にはその探索にも用いる。 腎炎モデルに関してはアドリアマイシン腎症・虚血再還流モデルなど、比較的容易に作成可能で、かつ遺伝的な操作の不要なモデルを用いて、ポドサイト特異的Rac1 KOマウス・ポドサイト特異的Rac1トランスジェニックマウス・マクロファージ特異的MR KOマウスなどの遺伝子操作モデルとの組み合わせを検討することで、よりRac1あるいはMRの作用がどの細胞種で障害的に優位な働きを持つのかを解明することを検討する。 アルドステロンの分泌制御に関連しては脂肪組織、あるいは細胞細胞由来の因子がアルドステロンの分泌を促進することが疑われ、これらの探索を行うとともに、インスリンの分泌制御に重要な役割を持つことが知られるRac1が、アルドステロンの分泌に関わるかについて検討する。
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