研究課題
我々の発見したInsulin-WNK-OSR1/SPAK-NCC/NKCC1カスケードが関与していることを明らかにすることで、高インスリン血症による腎臓と血管平滑筋での塩分感受性高血圧の病態生理を明らかにするとともに、本患者群に対する新しい高血圧治療ターゲットを確立することが本申請の目標となる。最も大きな進展は、慢性かつ生理的な高インスリン血症を認めるdb/dbマウスにおいて、PI3K-Aktシグナルが中心となって腎臓におけるWNKシグナルを亢進し、塩分再吸収を亢進する事によって塩分感受性高血圧がおきやすくなるという事実を発見し、Hypertension誌に"Phosphatidylinositol 3-kinase/Akt signaling pathway activates the WNK-OSR1/SPAK-NCC phosphorylation cascade in hyperinsulinemic db/db mice."として報告した。また、血管平滑筋におけるWNKの働きを明らかにし、Clin Exp Nephrol.誌に"Effect of heterozygous deletion of WNK1 on the WNK-OSR1/ SPAK-NCC/NKCC1/NKCC2 signal cascade in the kidney and blood vessels."として報告した。また、NCCがリン酸化を受けるとユビキチン化を受けにくくなり、膜上にNCCが集積する事をBBRC誌に"Phosphorylation of Na-Cl cotransporter by OSR1 and SPAK kinases regulates its ubiquitination."として報告した。
2: おおむね順調に進展している
以下、各々の項目について達成度を記載する。1:インスリンによるWNK4-SPAK/OSR1-NCCリン酸化カスケード制御の蛋白レベルでの研究。1-1:PI3K/Aktシグナル経路によるWNK4-SPAK/OSR1-NCCリン酸化制御の検討:PI3K-Akt各々の阻害薬実験によりインスリンとWNKをつなぐkinaseである事を明らかにし、Hypertension誌に報告した。1-2:インスリンによるWNK4リン酸化部位の検討:現在培養細胞での評価をおこなっている。2:遺伝子改変マウスを用いたInsulin-WNK-NCCリン酸化カスケードの研究、2-1:高インスリン血症 肥満/糖尿病モデルdb/dbマウス:db/dbマウスでのWNKシグナル亢進をHypertension誌に報告した。2-1-1:db/db, WNK4, OSR1/SPAKダブルノックインマウス:dbとOSR1/SPAKのダブル遺伝子改変マウスを作成し、db/dbマウスでWNK4またはOSR1/SPAKが失活すると下流のNCCリン酸化が起きなくなることを証明し、Hypertension誌に報告した。2-2:WNK4 R1185C BAC transgenic マウス:マウスは完成し、解析中である。2-3:WNKキナーゼ遺伝子改変マウス:ES細胞でのセレクションまで行ったが、マウスはまだ完成していない。2-4:高インスリン状態による血管平滑筋 WNK-SPAK/OSR1-NKCC1カスケードの培養細胞と生体組織での検討、マウス血管平滑筋でのWNKシグナルについて、現在論文Revise中である。3:メタボリックシンドローム/肥満患者における尿中NCCの研究:尿中NCCのELISAは完成したが、肥満度との相関はまだ得られていない。論文投稿中である。
以下、各々の項目について推進方法を記載する。1:インスリンによるWNK4-SPAK/OSR1-NCCリン酸化カスケード制御の蛋白レベルでの研究。1-2:インスリンによるWNK4リン酸化部位の検討:今後、培養細胞での強制発現から質量分析を用いた修飾解析を行う。2:遺伝子改変マウスを用いたInsulin-WNK-NCCリン酸化カスケードの研究、2-2:WNK4 R1185C BAC transgenic マウス:マウスは完成しており、本変異でのPHAII発症メカニズムを明らかにする。。2-3:WNKキナーゼ遺伝子改変マウス:ES細胞でのセレクションまで行っておりマウス作成に向けて進めていく。2-4:高インスリン状態による血管平滑筋 WNK-SPAK/OSR1-NKCC1カスケードの培養細胞と生体組織での検討、マウス血管平滑筋でのWNKシグナルについて、現在論文Revise中である。3:メタボリックシンドローム/肥満患者における尿中NCCの研究:尿中NCCのELISAは完成しており、さらに検体を集め、肥満度との相関を検討する。さらに他の項目との相関も検討する。
実験のための消耗品に約1000000円、学会発表のための旅費に約300000円、その他は論文投稿料や論文掲載料に用いる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
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