研究課題/領域番号 |
24790839
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福住 好恭 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20609242)
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キーワード | スリット膜 / SV2B / ポドサイト / 糸球体基底膜 / シナプス小胞 |
研究概要 |
シナプス小胞輸送分子SV2Bの機能喪失が、ポドサイトのバリア機能、足突起の形態、スリット膜構造、スリット膜機能分子の発現動態等に、どのように影響するかを解明するため、SV2B遺伝子ノックアウトマウスを用いて解析した。前年度はSV2Bノックアウトマウスにおいてスリット膜機能分子CD2AP、nephrin、NEPH1の発現強度が著明に低下し、不連続なパターンで観察されたことを報告した。 今年度はSV2Bノックアウトマウスのポドサイト頂部マーカー(podocalyxin、NHERF2)、ポドサイト基底部マーカー(integrin)の発現変化を免疫組織学的解析において解析した。また、糸球体基底膜マーカーであるintegrin、collagen IV、lamininの発現動態を免疫組織学的解析において解析した。その結果、SV2Bノックアウトマウスにおいてlamininの発現強度の著明な低下を観察した。さらに、SV2Bとスリット膜機能分子の相互作用を免疫沈降法、及びDuolink in situ法により解析したところ、SV2BがCD2AP、nephrinと相互作用することを観察した。また、糸球体発生時におけるSV2Bの発現動態を胎生期ラット腎を用いて解析したところ、SV2Bは糸球体発生のかなり初期(S-shaped stage)に発現していることを観察した。以上の結果より、SV2Bはスリット膜だけでなく、糸球体基底膜の形成においても重要であることが考えられ、シナプス小胞様の小胞輸送機構がスリット膜と糸球体基底膜において重要な役割を担っていることが示唆された。 また、ポドサイト特異的遺伝子ノックアウトマウスを作製するため、Podocinプロモーターにより制御されるタモキシフェン誘導性Cre(CreERT2)トランスジェニックマウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、シナプス小胞輸送分子SV2Bの機能喪失が、ポドサイトのバリア機能、突起の形態、スリット膜構造、スリット膜機能分子の発現動態等に、どのように影響するかを調べるため、SV2B遺伝子ノックアウトマウスを用いて解析した。 前年度は、野生型マウスと比較してノックアウトマウスで有意な蛋白尿の上昇を観察した。また、ノックアウトマウスから腎を摘出し、光学顕微鏡下における糸球体構造の解析や、スリット膜の微細な構造異常の有無を電子顕微鏡を用いて解析した。さらに、SV2B遺伝子ノックアウトマウスにおけるスリット膜機能分子の発現動態を解析し、ノックアウトマウスにおいてスリット膜機能分子CD2AP、nephrin、NEPH1の発現異常を発見した。 今年度はポドサイト頂部、基底部マーカーの発現検討を行い、SV2Bがポドサイトではスリット膜機能分子に特異的に働いていることを示唆する発見をした。また、スリット膜以外にも糸球体基底膜マーカーの1つであるlamininの発現異常を観察した。さらに、SV2Bが糸球体発生のかなり初期(S-shaped stage)に発現していることを観察した。また、SV2Bとスリット膜機能分子の相互作用を免疫沈降法、及びDuo link in situ法により解析したところ、SV2BがCD2AP、nephrinと相互作用することを観察した。また、SV2Bが糸球体発生のかなり初期(S-shaped stage)に発現していることを観察した。以上の解析結果から、シナプス小胞様の小胞輸送機構がスリット膜と糸球体基底膜の形成維持に重要な役割を担っていることが考えられた。 また、Podocinプロモーターにより制御されるタモキシフェン誘導性Cre(CreERT2)トランスジェニックマウスを作製した。 以上より研究計画通りにSV2Bノックアウトマウスにおけるポドサイトスリット膜機能分子の解析を進めることができており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
SV2Bノックアウトマウスの腎におけるシナプス小胞輸送関連分子群の発現動態を解析する。具体的には、SV2Bノックアウトマウスの腎皮質材料からcDNAを作製する。リアルタイムPCRを用いて、シナプス小胞輸送関連分子であるシナプス小胞分子(Rab3、Rab4、vGlut1、synaptotagmin)、前シナプス膜分子(neurexin)、前シナプス膜アダプター分子(Mint2、Munc18)の発現解析を行う。また、SV2Bに関連する新規分子を同定するため、次世代シーケンサによる網羅的解析を行う。 ネフローゼ誘導時におけるSV2B遺伝子の機能解析を、SV2B遺伝子ノックアウトマウスを用いて行う。具体的には、adriamycin(ADR)や大量のpuromycin aminonucleoside(PAN)を投与し、実験的ネフローゼモデルを作製する。これら病態マウスのスリット膜の構造異常やスリット膜機能分子の発現・局在変化を、平成24年度研究実施計画と同様の手法を用いて解析する。また、これら病態マウスに各種化合物、生物製剤(ブロッキング抗体)を各種経路(経口、筋肉内、腹腔内、皮下、静脈内)にて投与し、蛋白尿などの各種病変マーカーに対する改善効果の有無を解析する。 また、作製したPodocinプロモーターにより制御されるタモキシフェン誘導性Cre(CreERT2)トランスジェニックマウスの誘導効率を解析する。具体的には、トランスジェニックマウスにタモキシフェンを投与し、Cre発現を誘導する。誘導後、抗Cre抗体を用いてCre発現を確認する。またマグネットビーズを用いて、マウス糸球体を単離し、ポドサイト特異的遺伝子ノックアウトマウスの遺伝子発現消失を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究がおおむね順調に進んだため、当初の計画より遺伝子改変マウスの飼育経費を抑えることができた。 今年度はSV2B遺伝子ノックアウトマウスに加え、ポドサイト特異的遺伝子欠損マウスの解析を進めるため、これらのマウスの飼育経費に使用する予定である。
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