研究課題/領域番号 |
24790839
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福住 好恭 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20609242)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スリット膜 / SV2B / ポドサイト / 糸球体基底膜 / シナプス小胞 / 次世代シーケンサ / Neurexin |
研究実績の概要 |
シナプス小胞輸送分子SV2Bがポドサイト構造・機能維持にどのように関わっているのかを解明するため、SV2Bノックアウト(KO)マウスを用いて解析した。前年度までの研究では、SV2B KOマウスが蛋白尿を呈し、足突起の消失、基底膜の肥厚を観察した。また、スリット膜機能分子CD2AP、Nephrin、NEPH1と糸球体基底膜分子Lamininの発現パターンの異常を観察した。SV2BとCD2AP、Nephrinの相互作用を観察し、胎生期ラット腎を用いた解析からSV2Bが糸球体発生の初期(S-shaped stage)から発現していることを観察した。 今年度はSV2B KOマウス糸球体における他のシナプス小胞輸送関連分子の発現をReal-time PCR法により詳細に解析した。その結果、SV2B KOマウス腎皮質材料において、前シナプスにおいてシナプス小胞とのドッキング・開口に関与する分子であるNeurexinの発現低下が観察された。以上の結果より、SV2BはNeurexinを介してスリット膜構成分子の発現、細胞内輸送に関与していることが示された。シナプス小胞様輸送機構がポドサイト、スリット膜の機能維持に重要な役割を果たしていることが示唆され、これらの研究成果を北米病理学会誌であるLaboratory Investigation誌に報告した(Lab Invest. 2015;95:534-45)。 また、SV2Bに関連する新規分子を同定するため、次世代シーケンサIon protonによる網羅的解析を行い、いくつかの重要な分子を同定した。 さらに、前年度作製したPodocinプロモーターにより制御されるタモキシフェン誘導性Cre(CreERT2)トランスジェニックマウスを用いて、スリット膜機能分子の1つであると考えられるEphrin B1のコンディショナルKOマウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者は、シナプス小胞輸送分子SV2Bがポドサイト構造・機能維持にどのように関わっているのかを解明するため、SV2Bノックアウト(KO)マウスを用いて解析した。前年度までの研究では、SV2B KOマウスにおいてスリット膜機能分子CD2AP、Nephrin、NEPH1と糸球体基底膜分子Lamininの発現パターンの変化を観察した。免疫沈降法、及びDuolink in situ法の解析ではSV2BとCD2AP、Nephrinの相互作用を観察し、胎生期ラット腎を用いた解析からSV2Bが糸球体発生の初期から発現していることを観察した。 今年度はSV2B KOマウス糸球体における他のシナプス小胞輸送関連分子の発現をReal-time PCR法により詳細に解析し、SV2B KOマウス腎皮質材料において、Neurexinの発現が低下していることを観察した。この結果は、SV2BがNeurexinを介してスリット膜構成分子の発現、細胞内輸送に関与していることを示し、シナプス小胞様輸送機構がポドサイト、スリット膜の機能維持に重要な役割を果たしていることが示された。 さらに今年度は、腎糸球体のSV2Bに関連する新規分子を同定するため、次世代シーケンサIon protonによる網羅的解析を行い、チャネル分子、ケモカイン関連分子、極性維持関連分子などのいくつかの重要な分子を同定した。また、前年度作製したPodocinプロモーターにより制御されるタモキシフェン誘導性Creトランスジェニックマウスを用いて、スリット膜機能分子の1つであると考えられるEphrin B1のコンディショナルKOマウスを作製した。 SV2B KOマウスを用いた研究成果が、病理学分野のトップジャーナルであるLaboratory Investigation誌に掲載され、研究計画は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
SV2B KOマウス腎皮質材料を用いた次世代シーケンサ解析で同定された分子についての解析を行う。まず次世代シーケンサで得られた結果を確認するため、同定された分子のmRNA発現をReal-time PCR法を用いて解析する。再現性が得られた分子の抗体を作製し、免疫染色とウエスタンブロット解析を行い、ノックアウトマウスにおける蛋白質レベルの変化を調べる。また、ネフローゼ病態モデルラット(adriamycin腎症、puromycin aminonucleoside腎症)を用いて、ネフローゼ誘導時における同定された分子の発現、局在変化を解析する。同定された分子とSV2Bの相互作用を、免疫沈降法、及びDuolink in situ法により解析する。 また、研究代表者が所属する研究室がサブトラクション法(正常ラット糸球体より抽出したRNAと微小変化型ネフローゼ症候群モデル誘導直後、蛋白尿発症前の動物より抽出したRNAの引き算で特異的遺伝子を同定)でSV2Bと同じく最上位で同定したEphrin B1遺伝子の解析を行う。Ephrinシグナルのスリット膜における濾過障壁形成・維持機構を明らかにするために、ポドサイト特異的Ephrin B1 KOマウスを用いて解析する。具体的には、Ephrin B1 KOマウスから腎を摘出し、光学顕微鏡下における糸球体構造の解析や、スリット膜の微細な構造異常の有無を電子顕微鏡を用いて解析する。さらに、Ephrin B1 KOマウスにおけるスリット膜構成分子の発現動態を免疫染色法を用いて解析する。また、Ephrin B1に関連する新規分子を同定するために、次世代シーケンサを用いた網羅的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進展したため、遺伝子改変マウスの飼育経費を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はSV2Bノックアウトマウスに加え、ポドサイト特異的Ephrin B1ノックアウトマウスの解析を進めるため、これらのマウスの飼育経費に使用する。また、次世代シーケンサで同定された分子の解析を進めるため、PCRに必要な試薬や抗体等の費用にあてる。
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