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2012 年度 実施状況報告書

細胞内タンパク質分解機構の破綻と腎障害:分子機序の解明と治療戦略の確立

研究課題

研究課題/領域番号 24790840
研究機関山梨大学

研究代表者

加藤 裕紀  山梨大学, 医学工学総合研究部, 研究員 (40610283)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードタンパク質分解 / 腎障害
研究概要

本研究はIRE1経路による細胞内タンパク質分解機構のバランス調整に係る分子機序を解明し、「タンパク質分解機構の機能異常の是正」を目的とした新規腎疾患治療戦略の確立を目指すものである。当該年度では、第一義に分子機序の解明を目指し、研究を実施した。これまでに、タンパク質分解機構のバランス調整に係る分子機序は、オートファジーの調節因子Atg12-Atg5がIRE1に直接的な結合により機能することを明らかにしている。しかし、IRE1とAtg12-Atg5が結合するメカニズム等は不明であった。
まず、Atg12-Atg5がIRE1のどのアミノ酸領域に結合するのか検討した結果、Atg12-Atg5はIRE1のC末端側のkinaseおよびRNaseドメインの両方に結合していることが明らかになった。このことから、この結合がIRE1へ構造的な変化を与え、その結果IRE1の持つkinaseおよびRNase活性に影響を与えることにより、IRE1-XBP1経路(ユビキチン・プロテアソーム系)とIRE1-JNK経路(オートファジー)を逆相関的に調整していることが予想された。
また、IRE1とAtg12-Atg5の結合レベルを経時的に解析したところ、その結合レベルは正常な培養条件下では、わずかながらに変動し、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジーを精密に調整していた。一方で、それはER stress条件下では著しく変動し、タンパク質分解機構のバランス多く撹乱していた。
以上のことから、IRE1とAtg12-Atg5の結合を制御するには、IRE1のC末端領域を標的にすることにより、タンパク質分解機構のバランスを人為的に制限することが予想される。また、この結合レベルを指標とすることで、各種ストレス条件下でのタンパク質分解機構のバランス状態を提示することが出来る可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では最終的に、「タンパク質分解機構の機能異常の是正」を目的とした新規腎疾患治療戦略の確立を目指している。そのためには、生体内でIRE1とAtg12-Atg12の結合を制限する技術を創出しなければならない。前年度までにターゲットとなるIRE1のアミノ酸領域を特定している事から、今後はその配列に対するペプチドまたはモノクローナル抗体を作製することを目指す。そして、各種腎障害モデルマウスを用いた解析により、腎障害におけるタンパク質分解機構のバランス是正の生理・病理学的役割を明らかにする必要がある。前年度には、その基盤となる研究が完了している事から、上記の達成度を提示した。

今後の研究の推進方策

前年度の研究成果により、ER stress時にIRE1とAtg12-Atg5の結合レベルが著しく変動し、タンパク質分解機構のバランスが大きく撹乱していた。このことから、IRE1とAtg12-Atg5の結合レベルを指標にすることで、各種腎障害におけるタンパク質分解機構のバランスの異常を明らかにすることが出来る。このことから、今後の研究の推進方策に関しては、第一義に各種腎疾患モデル(培養細胞、モデルマウス)におけるIRE1とAtg12-Atg5の結合レベルをモニタリングし、タンパク質分解機構のバランス異常が起こっている事実を検証する。そして、前年度に特定にしたAtg12-Atg5との結合に不可欠なIRE1のアミノ酸領域に特異的に作用するペプチドおよびモノクローナル抗体を作製し、腎疾患におけるタンパク質分解機構のバランス異常の是正を目指したい。

次年度の研究費の使用計画

前年度には、主に分子機序の解明をすることを第一義の目的にしており、免疫沈降法および抗体等の消耗品の購入がメインであった。研究内容に関しては、特に問題も発生せずに、円滑に進める事が出来たために、予想よりも下回る研究費で遂行することで可能となった。今年度は、主に動物実験をメインにしており、マウスやモデルマウス作製のための試薬、TUNEL 染色キット等の購入をしなければならない。また、大量のサンプルを免疫沈降することにより、ラージスケールで抗体を購入しなければならない。また、今年度は研究報告のために、日本分子生物学会および日本生化学会に参加し、口頭発表を行う予定でいる。そのため、前年度よりも多くの研究費が必要となる。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Dual regulation of cadmium-induced apoptosis by mTORC1 through selective induction of IRE1 branches in unfolded protein response2013

    • 著者名/発表者名
      Kato H
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pleiotropic potential of DHMEQ for NF-κB suppression via reactive oxygen species and unfolded protein response2013

    • 著者名/発表者名
      Nakajima S
    • 雑誌名

      J. Immunol.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Unfolded protein response causes a phenotypic shift of inflamed glomerular cells towards redifferentiation through dual blockade of Akt and Smad signaling pathways2012

    • 著者名/発表者名
      Johno H
    • 雑誌名

      Am. J. Pathol.

      巻: 181 ページ: 1977-1990

    • DOI

      doi: 10.1016/j.ajpath.2012.08.015.

  • [雑誌論文] Blockade of adipocyte differentiation by cordycepin2012

    • 著者名/発表者名
      Takahashi S
    • 雑誌名

      British J. Pharmacol.

      巻: 167 ページ: 561-575

    • DOI

      doi: 10.1111/j.1476-5381.2012.02005.x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cordycepin as a sensitizer to TNF-α-induced apoptosis through eIF2α- and mTORC1- mediated inhibition of NF-κB2012

    • 著者名/発表者名
      Kadomatsu M
    • 雑誌名

      Clin. Exp. Immunol.

      巻: 168 ページ: 325-315

    • DOI

      doi: 10.1111/j.1365-2249.2012.04580.x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] mTORC1 serves ER stress-triggered apoptosis via selective activation of the IRE1-JNK pathway2012

    • 著者名/発表者名
      Kato H
    • 雑誌名

      Cell Death. Differ.

      巻: 19 ページ: 310-320

    • DOI

      doi: 10.1038/cdd.2011.98.

    • 査読あり
  • [学会発表] Dual regulation of cadmium-induced apoptosis by mTORC1 through induction of selective unfolded protein response2012

    • 著者名/発表者名
      加藤裕紀
    • 学会等名
      45th Annual Meeting of American Society of Nephrology
    • 発表場所
      サンディエゴコンベンションセンター(サンディエゴ) アメリカ
    • 年月日
      20121102-20121103
  • [備考] 山梨大学 大学院医学工学総合研究部 分子情報伝達学講座ホームページ

    • URL

      http://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical/molecular/

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公開日: 2014-07-24  

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