小胞体ストレス応答(UPR)はタンパク質恒常性(合成・分解・品質管理)を調整しており、多彩な疾患群の発症・進展に関与するとされる。腎臓病学の分野に於いてもその病理学的意義・重要性が注目されているが、UPRを標的とした腎疾患の治療戦略は未だ確立されていない。現在申請者はUPRのタンパク質分解系を調整するIRE1経路の制御機序にオートファジーの調整因子が関与することを明らかにしている。しかしながら、「この分子がどのようにしてIRE1経路を調整しているのか?」、さらに「腎機能の維持あるいは破綻のどちらに寄与するのか?」は不明であった。本研究ではオートファジー調整因子により調整されるIRE1の制御機序を明らかにし、腎障害におけるUPRのタンパク質分解機構の役割を明らかにすることを目的とする課題である。研究期間内に得られた成果は:1)オートファジー調整因子とIRE1は相互作用した、2)オートファジー調整因子はIRE1のC末端に結合した、3)小胞体ストレス条件下でこれらの結合が大きく変動した、4)腎細胞培養系でも同様に結合が変動した、5)オートファジー調整因子のIRE1への結合はIRE1経路の活性化に関与した。以上の結果から、オートファジー調整因子を介したUPRの調整が腎病態の進展に関与する可能性が示唆された。
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