研究課題
本研究では、血中の尿素が著明に上昇し血管石灰化・骨粗鬆症を生じる腎不全動物モデル(アデニン腎症ラット)を作成した。雄性Sprague-Dawleyラットを1)正常コントロール (Cont) 群、2)アデニン誘導性腎不全 (Ade) 群、3)アデニン腎不全+グリシン投与 (Gly) 群、4)アデニン腎不全+L-リジン投与 (Lys) 群の4群に無作為に分け、実験を行った。なお、グリシンは最も単純な構造のアミノ酸であることから、本実験ではアミノ酸コントロールとして用いた。Cont群に比べAde群・Gly群・Lys群では同程度に血清尿素窒素が上昇した。また血清クレアチニン濃度上昇もAde群・Gly群・Lys群間で同程度であり、グリシンやL-リジンは腎機能を改善しないことが明らかになった。しかし、リジンのカルバミル化修飾体であるホモシトルリンの血漿濃度を測定したところ、Cont群に比べAde群・Gly群で上昇し、Lys群で抑制される傾向にあり、L-リジン投与によりカルバミル化修飾(uremic memory)が抑制されうることが明らかになった。また、Ade群・Gly群で認められていた著明な血管石灰化病変は、Lys群でほぼ完全に抑制された。さらに、Ade群・Gly群で認められた著明な骨粗鬆症様の骨病変も、L-Lys投与によりほぼ完全に抑制された。これらの結果から、L-Lys投与によりuremic memoryが解除され、骨・血管病変が改善される可能性があることが明らかとなった。また、L-Lys投与は、血漿Ala, Pro, Arg, Homo-Arg濃度の上昇を引き起こし、Ala, Proの上昇は血管平滑筋細胞のアポトーシス抑制、Arg, Homo-Argの上昇はカルシウム・リンの沈着抑制性に作用することが明らかとなった。
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J Am Soc Nephrol.
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