研究課題
脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)は高いストレス感受性を示し、高血圧・脳卒中病態との関連が示唆されている。以前我々は、正常血圧を示すWistar-Kyotoラット(WKY)とSHRSPの間で作成したコンジェニックラットを用いた生理学的解析により、ラット第1染色体の約1.8-Mbpの領域に、交感神経の活性亢進を介して血圧上昇を引き起こす遺伝子が存在することを明らかにした。本研究では、既存のコンジェニックラット(SPwch1.72)を親系統であるSHRSPと交配し、より狭い染色体領域を保持する新しいコンジェニックラット(SPwch1.71)を作成した。これらのコンジェニック系統のストレス下における血圧と交感神経活性の変化を比較評価することで、ストレス感受性遺伝子の存在領域を1.2-Mbpにまで絞り込んだ。全ゲノムシークエンス解析の結果に基づき、この領域に含まれるStim1遺伝子について、SHRSPでナンセンス変異(p.Arg640X)が存在することを見出した。WKY、SHRおよびSHRSPの亜系に加え、一般に用いられている複数の実験用ラット系統について個別にシーケンシングを行ったところ、このStim1のナンセンス変異がSHRSP系統に特異的であることが明らかになった。ウェスタンブロット解析により、SHRSPの吻側延髄腹外側野(RVLM)を含む脳幹領域において野生型よりも短い変異型STIM1の発現が確認され、加えてSTIM1タンパク質の発現量はWKYと比較して有意に低いことがわかった。STIM1は小胞体カルシウム貯蔵センサーとして機能する。機能面への影響はまだ不明だが、SHRSPにおけるナンセンス変異の存在やタンパク質レベルでの発現低下を考慮すると、STIM1は現時点における最も有力な候補遺伝子である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
PLOS ONE
巻: 9 ページ: e95091
10.1371/journal.pone.0095091