研究課題/領域番号 |
24790847
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木戸 慎介 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 特任助教 (30437652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / FGF23 / 骨粗鬆症 / 筋萎縮 |
研究概要 |
申請者はこれまでにイタイイタイ病の原因物質であるカドミウム (Cd)が芳香族炭化水素受容体 (AhR)依存的にGalNAc-T3遺伝子を誘導し、FGF23の安定化を促すことを見いだしている。そこで当該研究計画では、CKD患者におけるFGF23産生亢進におけるGalNAc-T3の関与について検討した。また今回、GalNAc-T3の惹起因子として尿毒症物質であるインドキシル硫酸 (IS)に着目した。まず培養骨芽細胞にISを添加したところ、GalNAc-T3 mRNAの誘導並びにFGF23たんぱくの産生増加を認めたが、FGF23 mRNAは不変であった。またIS添加によるFGF23たんぱくの増加はsiRNA導入による内因性GalNAc-T3発現の抑制により減弱した。FGF23は骨由来の液性因子であるが、ISによるGalNAc-T3の誘導についても骨細胞で認められることをマウス当該骨より単離した初代培養系骨細胞画分を用いた系により確認した。またISを投与したマウスの骨組織内においても同様にFGF23産生の増加が骨細胞において認められることを免疫組織学的解析より明らかにした。次にISによるGalNAc-T3 mRNAの誘導機序について検討を加えるため、ヒトGalNAC-T3遺伝子のプロモーターを用いた解析を加えた。その結果、ISはGalNAC-T3遺伝子転写活性を用量依存的に誘導すること、同作用は当該領域内に存在するAhR応答配列 (XRE)依存的であることを新たに見いだした。以上の成績は尿毒症物質であるISがGalNAc-T3の誘導を介してFGF23の安定化を促すことを示すものであり、CKD患者におけるFGF23異常高値の機序の一端を分子レベルで説明しうるものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究計画は概ね、当初の予定通りに進展している。特に培養骨芽細胞系を用いた細胞内情報伝達経路の解析については、ほぼ予定通りの経過を既に得ており、また実験動物を用いたin vivoの解析についても、予備的検討をほぼ終了している。
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今後の研究の推進方策 |
FGF23は骨で産生され腎臓などの遠隔臓器に作用する内分泌因子であるが、これとは別に産生臓器である骨自身に対する作用 (autocrine/paracrine)も報告されている。またFGF23の遺伝子変異はある種のくる病/骨軟化症に類似した骨病変を呈することから、FGF23が骨・骨芽細胞系に作用してその機能を抑制することは十分予測されるが、その詳細な機序は不明である。実際にCKD患者においても骨不全とも称される、骨芽細胞機能の抑制が主体とされる骨代謝障害を呈するが、その詳細な分子機序は未だ不明な点が多い。そこで次年度は、骨芽細胞系でのFGF23の下流標的分子の検索を目的として、FGF23による骨芽細胞分化並びにその機能抑制に至る細胞内情報伝達経路の解析を試みる。その有力候補としてIRS-1の関与を中心に検討を進める予定である。IRS-1はインスリン刺激下での糖代謝制御のみならず、IGF-1刺激下での細胞増殖制御にも関わる重要な細胞内情報伝達経路である。これは骨・骨芽細胞系においても同様で、IRS-1の欠失は骨芽細胞分化の抑制を招き、骨形成低下性病態(骨粗鬆症)を来すことが遺伝子改変マウスを用いた解析により示されている。そこで当該研究計画では、CKD患者の体内で増加したFGF23が骨・骨芽細胞系の機能抑制を介して骨形成を阻害しているものと仮定し、特にIRS-1経路への関与を中心に解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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