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2013 年度 実施状況報告書

FGF23による筋・骨格系障害の分子機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 24790847
研究機関近畿大学

研究代表者

木戸 慎介  近畿大学, 農学部, 准教授 (30437652)

キーワード慢性腎臓病 / 筋・骨格系障害 / 腎不全 / FGF23 / リン代謝 / 骨代謝
研究概要

繊維芽細胞増殖因子 (FGF23)はリン利尿因子として同定された新規増殖因子であり、慢性腎臓病 (CKD)患者では腎機能の低下に先行して血中FGF23値の上昇がみられるだけでなく、血中FGF23値はCKD患者の生命予後にも関連することなどから、その重要性が示唆されるものの、その誘導機序並びに病態への関与については不明な点が多い。申請者は腎障害並びに骨軟化症を呈するイタイイタイ病患者並びにそのモデル動物の病態解析から、本症患者では血清FGF23値が高値を呈すること、またその機序としてカドミウムはFGF23の翻訳後修飾(分子内切断の抑制)に関わる糖鎖付加酵素GalNAc-T3の転写を芳香族炭化水素受容体 (AhR)依存的に誘導することでFGF23産生を促すといった新たな調節系の存在を明らかにした。AhRはダイオキシンなどの化学物質やカドミウムなどの重金属だけでなく、尿毒症物質の一種であるインドール誘導体によっても活性化を受けることから、CKD患者体内で蓄積がみられる尿毒症物質が当該経路を活性化する可能性が予測された。そこで本研究では尿毒症物質(インドキシル硫酸)が当該経路の活性化を介して骨でのFGF23産生を誘導され、これが血液を介して全身に運ばれ、CKDの病態(腎障害)並びに合併症としての筋・骨格系障害の発症並びにその進展に関わるものと考え、その検証を試みた。その結果、インドキシル硫酸 (IS)はin vitroおよびin vivoにおいて骨でのGalNAc-T3 mRNAの発現を誘導するとともにFGF23産生を惹起した。またISの作用はAhR依存的にGalNAc-T3遺伝子promoter活性を誘導することを見いだした。以上の成績は尿毒症物質であるISがGalNAc-T3の誘導を介してFGF23の安定化を促すことを示すものであり、CKD患者におけるFGF23異常高値の機序の一端を分子レベルで説明しうるものであると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該研究計画は概ね、当初の計画通りに順調に進んでいる。培養骨芽細胞を用いた細胞内情報伝達経路の解析はほぼ終了し、同様の経路がin vivoでも活性化されることを実験動物を用いて解析中である。

今後の研究の推進方策

CKD患者ではしばしば臀部・大腿部などでの筋萎縮と骨粗鬆症を認める。こうした筋・骨格系障害は患者の日常生活動作に多大な影響を与えるにも関わらず、他の合併症に比べてもその対策は遅れがちである。申請者は過去に糖尿病合併症発症におけるFGF23の関与について予備的研究を進めており、FGF23は骨格筋細胞におけるインスリン受容体関連分子 (IRS-1)の機能を下方制御することを見いだしている。IRS-1はInsulin/IGF-1シグナルを媒介する中心分子であり、IRS-1シグナル経路は糖代謝のみならず細胞増殖をも制御する極めて重要なシグナル分子でもある。InsulinあるいはIGF-1は骨格筋細胞においてInsulin受容体 (IR)依存的にIRS-1のチロシンリン酸化を促すことで下流シグナルを活性化するが、FGF23はInsulin/IGF-1とは異なる経路でIRS-1のセリンリン酸化を促しその機能を抑制することをin vitroの系で確認している。次年度はその詳細な分子機序を明らかにするとともに、FGF23と筋萎縮との関連についてより詳細な検討を試みる。またFGF23は産生臓器である骨に対してもautocrine/paracrine的に作用することが知られていること、FGF23の遺伝子変異はある種のくる病・骨軟化症の原因でもあることから、FGF23が骨を構成する細胞に直接作用してその機能を抑制する可能性が示唆される。骨におけるFGF23の標的分子としては前述のIRS-1経路の他、生理的な骨代謝調節に必須の役割を担うCanonical Wnt経路などが想定され、今後FGF23によるこれらシグナル経路への関与について検討を試みる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Molecular mechanisms of cadmium-induced FGF23 upregulation in osteoblast-like cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Kido S, Fujihara M, Nomura K, Sasaki S, Mukai R, Ohnishi R, Kaneko I, Segawa H, Tatsumi S, Izumi H, Kohno K, Miyamoto KI
    • 雑誌名

      Toxicological sciences

      巻: 139(2) ページ: 301-316

    • DOI

      10.1093/toxsci/kfu043

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hepatectomy-Related Hypophosphatemia: A Novel Phosphaturic Factor in the Liver-Kidney Axis.2014

    • 著者名/発表者名
      Nomura K, Tatsumi S, Miyagawa A, Shiozaki Y, Sasaki S, Kaneko I, Ito M, Kido S, Segawa H, Sano M, Fukuwatari T, Shibata K, Miyamoto KI.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol

      巻: 25 ページ: 761-771

    • DOI

      10.1681/ASN.2013060569.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Parathyroid hormone(1-34) counteracts the suppression of interleukin-11 expression by glucocorticoid in murine osteoblasts: a possible mechanism for stimulating osteoblast differentiation against glucocorticoid excess.2013

    • 著者名/発表者名
      Kuriwaka-Kido R, Kido S, Miyatani Y, Ito Y, Kondo Takeshi, Omatsu T, Dong B, Endo I, Miyamoto K, Matsumoto T.
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 154 ページ: 1156-1167

    • DOI

      10.1210/en.2013-1915

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vitamin D and Type II Sodium-Dependent Phosphate Cotransporters.2013

    • 著者名/発表者名
      Kido S, Kaneko I, Tatsumi S, Segawa H, Miyamoto K.
    • 雑誌名

      Contrib Nephrol

      巻: 180 ページ: 86-97

    • DOI

      10.1159/000346786.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Activating transcription factor 4, an ER stress mediator, is required for, but excessive ER stress suppresses osteoblastogenesis by bortezomib.2013

    • 著者名/発表者名
      Nakamura S, Miki H, Kido S, Nakano A, Hiasa M, Oda A, Amou H, Watanabe K, Harada T, Fujii S, Takeuchi K, Kagawa K, Ozaki S, Matsumoto T. Abe M.
    • 雑誌名

      Int J Hematol.

      巻: 98 ページ: 66-73

    • DOI

      10.1007/s12185-013-1367-z.

    • 査読あり
  • [学会発表] 古くて新しい課題:重金属研究の新展開 1.FGF23を介した腎臓―骨のリン恒常性維持機構に対するカドミウムの攪乱作用2014

    • 著者名/発表者名
      木戸慎介、瀬川博子、辰巳佐和子、宮本賢一
    • 学会等名
      第41回日本毒性学会学術集会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      20140702-20140704
    • 招待講演
  • [学会発表] 胎児期の低栄養曝露による生活習慣病の増悪化とその予防-脳卒中易発症性高血圧症自然発症ラットを用いて-2014

    • 著者名/発表者名
      上西梢、竹森久美子、木戸慎介、米谷俊、村上哲男
    • 学会等名
      第17回日本病態栄養学会学術集会
    • 発表場所
      大阪国際会議場(大阪)
    • 年月日
      20140111-20140112
  • [学会発表] 慢性腎臓病に併存する骨ミネラル代謝障害(CKD-MBD)の発症並びに進展におけるFGF23の関与2013

    • 著者名/発表者名
      木戸慎介、越智美佐子、藤原真理奈、向井朋、塩﨑雄治、瀬川博子、辰巳佐和子、宮本賢一
    • 学会等名
      第67回日本栄養・食糧学会大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知)
    • 年月日
      20130524-20130526

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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