研究概要 |
本研究では、間葉系細胞由来の糸球体構成細胞が最終的に骨芽・軟骨細胞様形質変化をきたし、不可逆的に腎不全に至る糸球体硬化の分子病態の詳細を明らかとするための検討を行った。我々がこれまでの研究で明らかにしてきた糖尿病性腎症の進展において重要なメサンギウム細胞の細胞外マトリックス産生亢進やメサンギウム細胞の形質変化において中心的な役割を果たすBMP4, Smad1および軟骨発生のマスター遺伝子であるSOX9および関連分子Scleraxisに主として着目した検討を継続した。(1)BMP4刺激下で培養メサンギウム細胞において、Sox9と、Sox9に直接転写制御を受けるH型コラーゲンは発現が誘導されるが、Sox9の内因性のインヒビターであるId2をメサンギウム細胞に強制発現させると、BMP4刺激下で誘導されるSox9およびII型コラーゲンの発現が抑制されることを確認した。(2)糖尿病性腎症モデルマウスでさらにBMP4/smad1-Sox9/Scleraxisシグナルの評価を進めた。STZマウスおよびBMP4ヘテロノックアウトマウスにSTZを投与して糖尿病性腎症を惹起したモデルを作成した。これらモデルマウスでの病理組織学的な変化と、腎機能・蛋白尿などの変化を経時的に評価し、糸球体硬化病変が進展していく過程において、BMP4/Smad1-sox9/Scleraxisのシグナルの活性化がSTZマウスではコントロールと比較して促進されており、逆にBMP4ヘテロノックアウトマウスでは減弱していることを、免疫組織学的解析にて確認した。(3)また、他の腎炎モデルでのSox9/scleraxis発現の検討として自然発症ネフローゼモデルであるICGNマウスにおいても、病変の進展過程で糸球体にSOX)の発現が増強してくることを免疫組織学的に確認した。いずれのモデルにおいても、Sox9はメスに比較して、オスでシグカル分子の発現量が増加していた。
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