研究課題/領域番号 |
24790855
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
城 理絵 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30464861)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ミネラルコルチコイド受容体 / プロテインキナーゼC / 糖尿病 / 高血圧 / アルドステロン |
研究概要 |
糖尿病に伴う高血圧は治療抵抗性をきたすことが多く、その機序の解明は臨床的に極めて重要である。糖尿病では血中アルドステロン濃度が正常~低値を示すことが多い一方で、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬の追加投与の有用性が報告されており、糖尿病においてMRが病的に活性化している可能性が示唆される。本研究は、糖尿病の合併症進展と関連の深いプロテインキナーゼC(PKC)シグナルの亢進がMR活性に与える影響を検討し、糖尿病におけるMR活性亢進の新たな分子機序を解明することを目的とした。 研究計画では、培養細胞を用いたin vitroの実験として、①高グルコースおよびPKC刺激によるMR転写活性および内因性MR標的遺伝子発現(reporter assay, real time RT-PCR)の評価、②MRのmRNAおよび蛋白レベルの発現量(real time RT-PCR, Western blot)の評価、③PKC刺激に伴うMRのリン酸化修飾の検出と修飾部位の同定、リン酸化修飾部位の変異体作成、④MRのリン酸化とユビキチン化の関連についての検討、を申請していたが平成24年度までに①、②、③の一部、④を完了した。 また、in vivo での検討として、糖尿病モデル動物(db/dbマウス)におけるMR標的遺伝子およびMR発現量の検討、PKC阻害薬による影響の検討、を申請していたが平成24年度までにこのほぼ全てを完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究計画のうち、in vitroの実験に関してはおおよそ80%程度の達成度と考えている。未達成事項を具体的に述べると、研究計画の③の「PKC刺激に伴うMRのリン酸化修飾の検出と修飾部位の同定、リン酸化修飾部位の変異体作成」である。PKC刺激によりMR蛋白がリン酸化修飾を受けることは確認することができたが、その部位の同定としてコンピューターによるPKCのリン酸化モチーフの解析を行なったが、その部位はMR蛋白上に多数存在しており、全ての変異体を作製して検討することは困難であった。今後、まずはMR蛋白の構造に基づいてAF-1, AF-1a, AF-1b, AF-2分画の変異体を作製し、これまでの結果が踏襲されることを確認する。続いて可能であれば質量分析を用いリン酸化修飾部位を網羅的に解明し、先の変異体での検討結果からある程度範囲を想定して、部位同定を行っていく予定である。 In vivoの検討においては、70%程度の達成度と考えている。目的としていたマウスにおけるMR蛋白の増加の検出とPKC阻害薬の投与による変化は捉えることができたが、最終的にそれが糖尿病性腎症における微量アルブミン尿の改善というところまでは確認出来ていない。この点について、残りの期間で検討する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、前述した残りの研究課題の推進とともに、海外学会での発表および論文の投稿を行う予定である。この研究から得られた結果は、平成25年度中に一度論文として報告する予定であるが、研究から得られた新たな課題を引き続き継続していく予定である。PKCの下流シグナルの検討やMR蛋白のリン酸化修飾後の動態解明など、検討すべき課題は多いと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費のうち、約3-4割を変異体の作製・解析及び質量分析に使用する。残り6-7割はマウス実験におけるマウス飼育代、試薬購入代などに使用する。
|