研究課題
カテプシンファミリーは代表的なリソソームプロテアーゼであり、細胞内外の代謝産物を分解・再利用し細胞の恒常性維持に重要な役割を果たしている。ポドサイトは終末分化細胞であり、様々なストレスに対抗し長い細胞寿命を保つために細胞内代謝が重要な役割を果たしている。本研究では、カテプシンL(CL)、カテプシンD(CD)とポドサイト障害について検討を行った。CLは腎障害時に発現が亢進し、ポドサイトの細胞骨格関連蛋白やスリット膜関連蛋白を過剰分解することで、足突起消失から蛋白尿が生じる。我々はCLノックアウトマウスを用いて糸球体硬化のモデルであるアドリアマイシン腎症を作成し、野生型と比較した。この結果、CLノックアウトマウスは蛋白尿だけではなく、糸球体硬化も抑制されることが明らかとなった。さらに野生型マウスにCL阻害薬であるE64を投与し、アドリアマイシン腎症を作成すると、同様に、蛋白尿と糸球体硬化が抑制された。これらの結果より、腎障害時にCLを阻害することで、ポドサイト障害が軽減されることが示された。CDはポドサイトにおける役割は明らかでなかった。我々が作成したポドサイト特異的CDノックアウトマウスは、遅発性の腎糸球体硬化症を発症し、生存期間は野生型と比し有意に短かった。電子顕微鏡ではポドサイトの細胞質にCDノックアウトマウスの神経細胞と同様の特徴的な封入体が蓄積し、これらの封入体は免疫電顕でミトコンドリアのATP合成酵素サブユニットCが陽性であった。免疫染色はオートファジー不全の像を示しており、サブユニットCの異常蓄積とオートファジー不全によりポドサイトがアポトーシスに至り、糸球体硬化を発症することが示された。CLとCDは、ポドサイトにおいて細胞内の重要な蛋白の分解に寄与しており、この役割を明らかにしていくことは慢性腎臓病の発症メカニズムの解明と新規治療法開発の上で重要と考える。
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