IgA腎症患者口蓋扁桃では以前から免疫異常が示唆されているが、その詳細は明らかにされていない。実際、IgA腎症患者への扁桃摘出術(扁摘)の治療効果が報告されているが、その理論的根拠は明らかにされていない。 今回我々は、げっ歯類と異なり扁桃を有し、以前にIgA腎症様の腎症を自然発症することが報告されている豚に着目し、今回扁摘を含めた口蓋扁桃への免疫学的アプローチを開始した。以前にプレリミの段階でIgA腎症様の腎症を呈していることを確認しているマイクロミニピッグの委託飼育に着手し、自然経過群と、月齢4ヶ月で扁桃摘出術を行う扁桃摘出群(扁摘群)に分け、継時的に腎生検を行い腎組織を含めた腎症の表現型の他、口蓋扁桃の細胞分子レベルでの免疫学的評価を開始した。腎組織は月齢4ヶ月の時点で、両群において免疫染色でIgAやIgGの沈着は軽度であるものの、電子顕微鏡でパラメサンギウム領域を中心に高電子密度沈着物を認めた。月齢8ヶ月の時点で、自然経過群と比較し扁摘群において免疫染色でIgAやIgG、C3の沈着強度とメサンギウム増殖性変化がやや低下している可能性が示唆されているが、今後経過をみて判断する必要があると考える。また、尿所見については、扁摘群で腎生検直後一部の個体で尿蛋白と尿潜血を認めたが、その後両者ともに陰性で経過し、自然経過群と差は認めていない。今後継時的に腎生検を含めた腎症の表現型を継続して行い、両群での比較検討を行っていく。また、両群間での血清IgAの推移や、IgAの糖鎖解析、さらにはヒトIgA腎症と同様にIgAを含む免疫複合体形成の有無の検証や、B細胞の分化・延命に関わるサイトカインであるAPRILやBAFFなどを含めた口蓋扁桃の免疫学的解析を継続して行っていく。
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