研究課題/領域番号 |
24790867
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
津田 秀年 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (40622618)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 組織再生 / 免疫制御 / 卵膜 / 虚血再灌流障害 |
研究概要 |
虚血再灌流障害は腎移植において不可避であり、その後の移植腎機能や生着率に影響するため、できるだけ軽減することが重要となる。既に骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)による虚血再灌流障害に対する治療効果を有することが報告されているが、骨髄採取に伴う侵襲性や採取量が少ないなどの問題を有している。そこで利点の多い卵膜由来MSCを用い、腎虚血再灌流障害モデルに対する卵膜由来MSCの治療効果を検討した。 腎虚血再灌流障害モデルは、6週齢雄Lewisラットの右腎を摘出後、左腎動脈を60分間結紮することにより作成した。再灌流時にMHCハプロタイプの大きく異なるACIラット由来卵膜MSC(5x10^5個)を尾静脈より投与した。その後、6,12,24,72時間後に生化学的・病理学的評価、更に各種サイトカイン測定を行った。 再灌流24時間後、血中尿素窒素およびクレアチニンの顕著な増加がみられたが、卵膜由来MSC移植により有意な改善を認めた。次に組織学的検討を行ったところ、再灌流24時間後において虚血再灌流による尿細管障害が見られたのに対し、卵膜由来MSC移植によりそれらが軽減された。また尿細管におけるアポトーシスも有意に抑制された。さらに抗αSMA抗体を用いて腎間質における形質転換を評価したところ、同様に卵膜由来MSC移植によりそれらが減少していた。定量的RT-PCR解析では線維化関連遺伝子であるTGF-βやType I collagenの腎mRNA発現が卵膜MSCを移植した群にて有意に抑制されていた。 これらのことより卵膜由来MSCは腎虚血再灌流障害に対して組織保護効果を発揮することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度は腎虚血再灌流障害における卵膜由来MSC移植治療の有効性と組織再生効果についての検証を目的とした。卵膜由来MSC移植による腎障害のマーカーである血中尿素窒素およびクレアチニンの増加の軽減、腎組織における尿細管障害の改善、線維化関連遺伝子のmRNA発現抑制が認められたことより、卵膜由来MSCは腎組織保護作用を十分に持つことが示され、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
卵膜由来MSCによる組織保護効果がH24年度において確認されたので、本年度は近年注目されている免疫調節能に着目して研究を進める。昨年と同様に腎虚血再灌流障害モデルを作成し卵膜由来MSC移植を行い、腎組織におけるマクロファージやT細胞浸潤の評価、腎組織における免疫・炎症関連因子のmRNA発現の検討、血清中の免疫・炎症関連因子の測定を行い免疫調節能の有無を検討する。 またラットリンパ球と卵膜由来MSCの共培養系を用いてリンパ球に対して直接的な作用を持つかを検討することにより、卵膜由来MSC移植による治療効果の機序を解明していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度同様、卵膜由来MSCに関わる培養関連用品や動物の購入に加え、卵膜由来MSC移植による免疫調節能の検討として、免疫組織染色に要する抗体および血清中免疫・炎症関連因子の測定に必要な物品を購入予定である。研究はおおむね順調であるが、免疫調節作用に関する検討では有意な差がみられず、詳細に検討する際に要する高価な抗体や測定キットを用いていないため当初予定より大幅に残額が発生した。次年度は動物実験と並行して、細胞を用いたラットリンパ球と卵膜由来MSCの共培養に要する培養用品およびサイトカイン、また機序検討に要する抗体や測定キット等に使用する予定である
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