研究課題
これまでに我々は卵膜由来間葉系幹細胞(FM-MSC)は大量かつ非侵襲的に入手できる再生医療に有用な細胞ソースであることを報告してきた。本研究は腎虚血再灌流障害モデルを用いてFM-MSCの組織保護効果および免疫調節効果とその機序を検証した。Lewisラットにおいて右腎摘後60分間左腎を虚血し、再灌流時ACIラットより得たFM-MSCを経静脈的に移植した。コントロール群は再灌流後24時間に顕著な血清クレアチニン値、BUN値の増加がみられたが、FM-MSC移植群ではその増加は有意に抑制された。また、腎臓の組織学的検討では再灌流後24時間後において尿細管障害が見られたが、FM-MSC移植によりそれらが軽減された。また尿細管におけるアポトーシスも同様に抑制された。さらにて腎間質における形質転換を評価したところ、同様にFM-MSC移植により減少していた。それに伴い腎線維化関連遺伝子であるTGF-βやType I Collagenの腎mRNA発現がFM-MSC移植した群において有意に抑制されていた。次に炎症調節効果を組織学的に検討したところ、再灌流後6時間からみられたマクロファージ浸潤が、FM-MSC移植により有意に抑制された。同様に、再灌流後6時間から12時間後において病態群でみられたT細胞浸潤がFM-MSC移植により有意に減少した。また、病態群で認められた腎組織におけるMCP-1,IL-6mRNA発現増加はFM-MSC移植により有意に抑制された。FM-MSC移植群では、再灌流後血清IL-10の増加が認められたため、IL-10中和抗体をFM-MSCと同時投与したところ、血清IL-10の有意な減少に加え、腎機能改善が消失した。本モデルにおける他家FM-MSC移植による病態改善機序として、FM-MSCによるMCP-1・IL-6産生抑制やIL-10産生促進が関与していることが示唆された。
すべて 2013
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Cell transplantation
巻: 23