神経変性疾患におけるMULとFIP200の発現とニューロン変性の関係を検討する目的で、過去に当院で剖検されたパーキンソン病、多系統萎縮症、Machado-Joseph病、筋萎縮性側索硬化症、脳腫瘍(健常側)の病理検体の大脳皮質、小脳皮質に対して、抗FIP抗体ならびに抗MUL抗体によって免疫組織染色をそれぞれの疾患で数例ずつ行った。脳腫瘍剖検例の健常側は正常脳と考えて対照コントロールとして用いた。筋萎縮性側索硬化症において小脳皮質プルキンエ細胞におけるFIP200の染色性が低下しているように思われる所見が得られた。昨年より対照症例数を更に増やして検討しているが、パーキンソン病、多系統萎縮症、Machado-Joseph病では正常コントロールと比較して有意な変化は確認できていない。筋萎縮性側索硬化症で小脳Prukinje細胞に見られた変化は大脳皮質における一次運動ニューロンや脳幹の各種脳神経核においては同様の変化は認められなかった。2例での検討なので、更に症例を増やして検討する必要があると考えている。パーキンソン病におけるLewy小体、多系統萎縮症におけるGlial cytoplasmic inclusion(GCI)についても検討したが、特に染色性に変化はみられずMULおよびFIP200の蓄積は確認されていない。 MULやFIP200の細胞内の過剰発現やknock downによるオートファジー誘導の変化を観察する目的で培養細胞に標識を結合させたLC3蛋白を恒常的に発現させる予定であるが、ウイルスベクターの作製にはまだ入れていない。病理検体における検討において確実に変化を確認してからin vitroでの実験に取りかかりたいと考えている。
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