研究概要 |
本研究は、異常プリオンタンパク質 (PrPSc)のin vitro増幅系であるProtein Misfolding Cyclic Amplification (以下PMCA) 法を用いてクロイツフェルトヤコブ病 (CJD) の新しいタイピングを行うことを目的とした。我々は、正常プリオンタンパク質 (PrPC) を大量発現させたリコンビナントPrPC (rPrPC) を基質に用いたCell-PMCA (cPMCA) によって、200以上のCJD の症例のPrPScをPMCA法によって増幅し、増幅効率の違いや、基質遺伝子型の選択性の違いをもとに、新たなCJDの特徴付けを行った。ヒトの正常多型に基づいて、プリオン遺伝子の129番目に着目し、基質には129MrPrPCと129VrPrPCを用いて各CJDタイプ (弧発性CJD (sCJD); MM1, MM2, MV2, VV2, 変異型CJD, 硬膜移植後CJD (dCJD), 家族性CJD) の増幅効率を比較した。dCJDの中には、遺伝子型が129M/Mでありながらプラーク様のPrPSc沈着が脳内に認められ、PrPScはタイプ1とタイプ2の中間型を示すプラーク型dCJDが存在する(p-dCJD) 。これらの症例は遺伝子型か129M/Mであるにもかかわらず、129Vの基質により高感度検出可能な程度まで顕著に増幅することがわかった。この結果は、遺伝子型が129M/Mでありながら129Vで顕著に増幅する症例は、129M/MのヒトがMV2やVV2に感染して感染した獲得性CJDである可能性を強く示唆するものである。129Mまたは129VのrPrPCを用いたcPMCA法はこうした問題例を簡単に診断できるツールとして極めて有用であると考えられた。
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