Fahr病は、常染色体優性の遺伝性疾患である。臨床的には精神症状、認知症、パーキンソン症候群など多彩な表現型をとり、画像上は大脳基底核を中心とした石灰化像を特徴とする。これまで、連鎖解析により本疾患に連鎖する染色体領域(2q37、8p21.1-q11.23、14q)が報告されている。本研究の目的は、本疾患の家系のゲノムを解析し、病因となる遺伝子変異を同定することである。本家系にはパーキンソン症状を呈し、大脳基底核に石灰化をきたした発症者が2名、無症候性に大脳基底核に石灰化を来たした例が1名が3世代に渡って存在し、常染色体優性の遺伝形式が強く示唆された。岩手医科大学、前沢千早教授グループとの共同研究で、次世代シーケンサーを用いて発端者のゲノム全エクソンのシーケンスを行った。ヒトゲノムプロジェクトによって明らかにされている塩基配列情報をもとに、アミノ酸置換あるいはストップコドンを生じる突然変異を同定する作業をすすめた。本家系の病因突然変異の絞込みのため、これにより抽出した候補遺伝子変異のうち、Fahr病家系内の発症者にのみ存在し、非発症者には存在しない突然変異をGoldenGate Genotyping assayにより同定する予定である。
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