視神経脊髄炎(neuromyelitis optica: NMO)と多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)は中枢神経内に再発性に炎症を来す自己免疫疾患である。 近年、生体に免疫反応を誘導するAlarminの一つであるhigh mobility group box 1(HMGB1)の研究が各種自己免疫疾患において多くなされ、新規治療ターゲットして期待されている。今回、我々はNMO/NMO関連疾患42例、再発寛解型MS 30例、非炎症性神経疾患(non-inflammatory neurological diseases: NINDs)30例の髄液中のHMGB1濃度を測定し、臨床パラメーターとの相関を検討した。その結果、NMO、MSで髄液HMGB1が有意に上昇しており、中枢の炎症パラメーターと相関していた。さらにNMOにおいては髄液IL-6、髄液/血清アルブミン比やglial fibrillary acidic proteinとも相関を認め、髄液HMGB1が中枢の炎症、血液脳関門破綻、アストロサイトの障害に関与していることが示唆された。またmyelin oligodendrocyte glycoproteinで免疫したexperimental autoimmune encephalomyelitis (EAE)マウスに抗HMGB1モノクローナル抗体を5日間腹腔内投与したところ、血清IL-17のup-regulationが抑制され、EAEの重症度・炎症が軽減した。 本研究の結果からは、HMGB1は炎症メディエーターとして、NMO、MSの病態に関与しており、HMGB1の制御はサイトカインや炎症の抑制につながることが示唆され、将来的にNMO、MSなどの自己免疫性炎症性疾患の治療標的として有用な可能性があると考えられた。
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