研究課題
若手研究(B)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症に強く関与する核内蛋白であるTDP-43の発現低下により,核内小体の一つであるGEM小体の構成蛋白であるSMN(survival motor neuron)の動態の変化を確認するため,下記の実験を行った.1.TDP-43の発現抑制によるSMN小体数の変化 核内小体の研究で広く使用されているHeLa細胞を用いて,TDP-43をsiRNAで発現を抑制し,抗体SMN抗体で免疫染色し,蛍光顕微鏡で観察してSMN小体の数を計測した.コントール,およびTDP-43発現抑制細胞それぞれ200細胞ずつ観察し,1細胞あたりのSMN小体の数を計測した.コントロール,2.97±0.127(平均±標準誤差);TDP-43抑制細胞,1.54±0.93であり,TDP-43の発現が低下すると,SMN 小体の数が減少することを明らかとした(P<0.001,Mann-Whitney’s U test).2.TDP-43の発現抑制によるSMN蛋白量の変化 上記細胞を用いて,ウエスタンブロット法で,SMNの蛋白量の変化を確認した.TDP-43の発現抑制を抑制すると,SMN蛋白量が低下することを明らかとした.3.疾患関連変異TDP-43の細胞内動態の解析 14種類の疾患関連変異および野生型TDP-43をC6細胞にトランスフェクションし,可溶性画分であるTris画分と不溶性画分であるSDS(sodium dodecyl sulfate)画分に分画化し,ウエスタンブロットを行った.Tris画分と比較してSDS画分に断片化されたTDP-43が多く検出されたが,野生型と変異型との間では違いは見いだせなかった.上記の結果から,TDP-43の発現量が低下すると,SMNの数および蛋白が低下することを明らかとした.
2: おおむね順調に進展している
TDP-43の発現低下が,RNA代謝に関与する核内小体に影響を与えることを,培養細胞を用いて証明することができたため,平成24年度の実施すべき目標は概ね実施することができたと考える.
平成24年度の研究で,培養細胞を用いて証明したSMNの低下が,ALS症例で生じているか否かを確認するため,剖検検体を用いて確認する.具体的には,弧発性ALSおよび神経変性疾患を合併していないコントロールの脊髄前角細胞を用いて,抗体SMN抗体による免疫染色,ウエスタンブロットを行い,SMNの数,量を確認する.またSMN小体の体積も,画像解析ソフトを使用して解析する予定である.
上記研究を実施するにあたり,免疫染色の抗体や試薬,細胞への遺伝子導入やsiRNAなどの消耗品,シークエンス関連試薬,細胞培養の試薬などの消耗品の購入を行う予定である.
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J Neurol Neurosurg Psychiatry
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http://www.bri.niigata-u.ac.jp/~neuroweb/laboratory/research_basic_002.html