研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症に強く関与する核内蛋白であるTAR-DNA binding protein of 43kDA(TDP-43)は,種々の核内小体を共局在している.ALS病理では,運動ニューロンの核内TDP-43が消失していることから,TDP-43と共局在している核内小体に影響が出ている可能性を確認するため,ヒト剖検検体を用いて実験を行った.弧発性ALS5症例,コントロール5症例の腰髄前角細胞を抗TDP-43抗体,およびGEM小体を確認するため抗SMN抗体を用いて免疫染色し,共焦点レーザー顕微鏡で画像を取得した.画像は解析ソフトImamrisを用いて三次元再構成し,1前角細胞,6μm厚中のSMN小体の面積,数を計測した.SMN小体数は,ALSは3.25±1.40(平均±SEM),コントロールは11.05±2.14であり,ALS群では有意にSMN小体が減少していた(P<0.05).一方,SMN小体の体積はALS群0.60±0.20μm3(平均±SEM),コントロール群0.67±0.32μm3で,有意差を認めなかった.また,TDP-43をコードするTARDBP遺伝子変異(p.Gln343Arg)を有する家族性ALSの剖検脊髄でも合わせて検討した.GEM小体数は,2.67±0.50とコントロール群と比較して低下していた.平成24年度の研究結果(培養細胞でTDP-43の発現抑制によりGEM小体が減少する)と合わせて考えると,ALSにおいて核内TDP-43の消失がGEM小体数の減少を誘発し,それが神経細胞死の原因になっている可能性があると考える.
2: おおむね順調に進展している
ヒト剖検脊髄を用いて,ALS症例ではGEM小体が減少していることを証明することができた.平成25年度は剖検検体を用いて,核内小体の異常を証明することが目標であったため,実施すべき目標の8割を達成することができたと考える.ヒト剖検検体を用いた蛋白の解析がうまく進行しなかったことが,本年度の研究目標の未達成の点である.
GEM小体を始めとする核内小体の減少が,神経細胞死にどのように関与しているかのメカニズムの解明を,培養細胞を用いて検討する.またGEM小体,Cajal小体など核内小体の減少がALSに特異的な事象なのか否かを,運動ニューロンの減少を伴う他の神経変性疾患でも検討する.もし,他の神経変性疾患でも同様の事象を認める場合には,運動ニューロン死のcommon pathwayの解明を目指す.
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