筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症に強く関与する核内蛋白であるTAR-DNA binding protein of 43 kDa(TDP-43)は,種々の核内蛋白の集合体である核内小体と共局在している.ALS病理では,細胞質内にTDP-43陽性封入体を形成した細胞では,核内TDP-43が消失していることから,TDP-43の機能喪失による核内小体の機能変化が運動神経細胞死に関与しているという仮説で研究を進めている. 昨年度は,弧発性ALS症例およびTDP-43をコードするTARDBP変異ALSでは,運動神経細胞内のSMNを有するGEM小体が減少していることを明らかとしたが,今回はTDP-43病理を伴わないSOD1遺伝子変異による家族性ALS(p.Asp101Tyr)1症例においてGEM小体数を計測した.SOD1変異症例は14.33±1.90であり,コントロール(11.05±2.14)と有意差を認めなかった. 次に弧発性ALS症例での運動神経内のTDP-43陽性細胞質内封入体の有無に関係するか否かを検討した.GEM小体数は,TDP-43陽性細胞質内封入体ありは3.03 ± 1.40,細胞質内封入体なしは3.02 ± 1.99であり,細胞質内封入体の有無によるGEM小体数に有意差を認めなかった.また, 平成25年度の結果から,弧発性ALS症例ではコントロール症例と比べて,脊髄前角細胞中のGEM小体は減少していたが,SOD1変異ALS症例においてはGEM小体の減少は認められないことが明らかとなった.また弧発性ALSにおけるGEM小体数は,核内TDP-43の有無に関係しなかった.つまり,弧発性ALSでは運動神経細胞内からTDP-43蛋白が消失する前より,TDP-43の何らかの機能異常を起こしている可能性が考えられる.
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