研究課題/領域番号 |
24790877
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
松永 晶子 福井大学, 医学部, 助教 (40401971)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 小脳失調 / 自己免疫性脳症 / 橋本病 / プロテオミクス / パッチクランプ法 / 免疫組織蛍光染色 |
研究概要 |
慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性脳症(”橋本脳症”)は治療可能な疾患であり,脊髄小脳変性症(SCD)類似の臨床像を呈することがあり(”小脳失調型橋本脳症”),鑑別疾患上重要である.また,我々の研究グループでは橋本脳症に対する血清中特異的自己抗体(抗NAE抗体)を同定し,その後国内外から解析依頼を受けている. <小脳失調型橋本脳症の臨床研究> 今年度,臨床研究として13例を対象とした臨床像に関する詳細な検討を行った.その結果,SCDと類似点として,慢性進行性小脳失調を示した症例が多く,半数でSPECTでの小脳血流低下があった.SCDとの相違点は,眼振が乏しく,小脳萎縮の割合が少なく,全例で免疫治療が奏功した点がみられた.特に抗NAE抗体陽性例は、陰性例よりも免疫療法への反応性が良好である傾向がみられた.この結果を論文とし,Eur Neurolに投稿,掲載された. <小脳失調型橋本脳症の病態研究> 生理機能解析として,ラット小脳スライスに患者髄液を反応させて,プルキンエ細胞のシナプス伝達の解析を行った.①分子機構の解明:プロテオーム解析の準備として,ラット小脳細胞の培養を行った.培養は可能であったが,タンパク量の抽出が2D-DIGE法に必要な十分量を確保できなかった.②自己抗体の小脳への免疫反応性:ラット小脳スライスに患者髄液を添加し,免疫組織蛍光染色を行った.ラットプルキンエ細胞に対して,非特異的に蛍光標識した2次抗体が反応するため,抗原賦活法や固定方法の変更などを試みている.③生理機能解析:ラット小脳スライスでパッチクランプ法を用いてプルキンエ細胞のシナプス伝達の解析を行った.小脳失調型橋本脳症患者の髄液添加により,プルキンエ細胞のシナプス伝達の障害が生じることが明らかとなり,論文投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究については,次年度の計画も達成し,論文に発表,掲載した.病態研究は,生理機能解析については目標を達成し,論文投稿中である.免疫組織染色と,プロテオーム解析については,方法を変更して解析を続けている.
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今後の研究の推進方策 |
<小脳失調型橋本脳症の臨床研究> 今年度論文を掲載したが,更に症例を増やし,今後も引き続き解析を進める. <小脳失調型橋本脳症の病態研究> ①分子機構の解明:培養ラット小脳細胞から十分量のタンパク抽出が困難である場合は,脳血液関門の血管内皮細胞を用いて当初の実験を行うこととする.具体的には,培養細胞に患者の血清/髄液を添加し反応させた後に,2D-DIGE法を用いてプロテオーム変化を解析する.②自己抗体の小脳への免疫反応性:免疫蛍光染色を用いているが,ラットプルキンエ細胞に対して,非特異的反応が生じるために解析が進んでいない.今後,抗原賦活法や固定方法の変更などを試みて,引き続き解析を進める.③生理機能解析:ラット小脳スライスを用いたプルキンエ細胞のパッチクランプ法によるシナプス伝達の解析については,論文投稿中であり,引き続き論文掲載に向けて活動する.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費としては,ウシ血清,ラット脳スライス切片,各種抗体,プラスティック器具など,病態研究において必要なものを購入する予定である. また,学内の機器を使用することも多く,機器使用費も予定している. その他,研究成果の発表のために国内外で学会出席や,論文投稿のための英文校正費や投稿費を予定している. 実験設備は整っており,設備備品を購入予定はない.
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