研究課題/領域番号 |
24790879
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山門 穂高 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10378771)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パーキンソン病 |
研究概要 |
パーキンソン病(PD)はカテコラミン細胞特異的細胞死と、α-シヌクレイン(α-Syn)を主成分とするLewy小体の存在を特徴とする。α-Syn遺伝子のSNP多型による発現亢進が遺伝要因として重要であり、タンパク分解系の障害など複合要因の付加で発症する。凝集化α-Synはタンパク分解装置proteasome(PS)を阻害し、生じた細胞内ストレスはα-Synの転写・凝集促進により悪循環を形成する。現在PDの特徴を再現するよい動物モデルが存在しないことが研究上の大きな障壁となっている。そこでBAC(細菌人工染色体)を用いてα-Syn遺伝子発現調整領域にCreを発現するCre/α-synマウスを作製し、①本来のα-Syn発現領域にヒトα-synを高発現するCre-loxP conditional Tgマウスを各々作製することにより、より忠実な孤発性PDマウスモデルの作製を目的とした。このマウスにおいて、α-Synの発現はCreの発現にある程度依存すると考えられ、Creの発現が実験の成否を左右すると考えられる。孤発性PDのリスク因子として同定されたSNP はCreの発現を増加させると考えられるが、我々のCre/α-syn BAC cloneはリスクが減少するtypeのSNPを持っていることが判明した。このため、我々の孤発性PDのリスク因子として同定されたSNPをCre/α-syn BACに導入することとした。ヒトα-syn BAC内で、Ret/ET systemを用いて、いくつかのリスク因子として同定されたSNPを改変した。また同様にα-syn発現上昇効果を持つとされるα-syn のRep1配列の改変も行った。今後はこのBAC cloneを用いてCreマウスを作製する予定である。一方、α-syn/loxP Tgマウスに関しては、他施設から入手することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BAC(細菌人工染色体)を用いた、α-Syn遺伝子発現調整領域にCreを発現するCre/α-synマウスの作製において、一部方針を変更した。Cre-loxP conditional Tgマウスにおいてはα-Synの発現はCreの発現にある程度依存すると考えられ、Creの発現が実験の成否を左右すると考えられる。孤発性PDのリスク因子として同定されたSNP はCreの発現を増加させると考えられるが、我々のCre/α-syn BAC cloneはリスクが減少するtypeのSNPを持っていることが判明したため、我々の孤発性PDのリスク因子として同定されたSNPをCre/α-syn BACに導入することに方針を変更した。ヒトα-syn BAC内で、Ret/ET systemを用いて、いくつかのリスク因子として同定されたSNPやα-syn のRep1配列を改変したが、改変に困難を伴い、これが研究にやや遅れがみられる主たる原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は改変Cre/α-syn BAC cloneを用いてCre/α-synマウスを作製する。α-syn/loxP Tgマウスに関しては、他施設から共同研究として入手する予定とした。α-syn固有の発現部位に、各々ヒトα-synを過剰発現させるconditional Tgマウスに関しては、作製後 6か月~1年齢で行動解析を行い、細胞死・α-syn凝集を中心とする病理学的解析、カテコラミン系のHPLC・線条体ドパミンmakerのimmunoblotなどの生化学的解析を施行する。さらにCre陽性・陰性各細胞におけるα-synを主に免疫組織学的に検討し、α-synの細胞間伝播を検証する。また遺伝性要因に対する環境要因として、薬物投与実験(MPTP、ロテノン)を施行する。上記マウスの作製が困難な場合は、SNP/Rep1改変α-syn BAC cloneを用いてα-syn BAC Tgマウスを作製する。さらに孤発性PDの現在判明している最大のリスク因子であり、α-synの代謝に関与するglucocerebrosidase (GBA)のヘテロKOマウスを使用し(当施設に導入すみ)、SNP/Rep1改変α-syn BAC cloneを用いて作製されたα-syn BAC Tgマウスと交配することにより、目的とする忠実な孤発性PDマウスモデルの作製を目指す。Rpt3(プロテアソームsubunit)ヘテロKOマウスとの交配に関しては、時間的・予算的制限から、上記conditional Tgマウス作製を優先させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
SNP/Rep1改変Cre/α-synを用いてCre/α-syn BAC Tgマウスを作製するが、作製が困難な場合は、SNP/Rep1改変α-syn BAC cloneを用いてα-syn BAC Tgマウスを作製する。このための費用を計上する(40万~80万×1)。また交配マウスの飼育(40万円前後)、行動解析(1か月間、10万円)に使用する。細胞死・α-syn凝集を中心とする病理学的解析、カテコラミン系のHPLC・線条体ドパミンmakerのimmunoblotなどの生化学的解析に関しては、研究室内や前年度購入試薬の残りを使用する予定である。学会での成果の発表のための交通費として、約10万円を使用する。
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