研究課題
本年度は慢性炎症性脱髄性根ニューロパチー(CIDP)患者血清と多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者血清が血液神経関門(BNB) in vitroモデルに及ぼす影響を解析した.まずCIDP患者を対象とした研究では,各CIDP病型(典型的CIDP患者/非典型的CIDP患者)の患者血清を作用させるとBNB in vitroモデルでのバリアー機能を反映する電気抵抗値が低下し,tight junction関連蛋白であるclaudin-5蛋白量が低下することを示した.さらに,CIDP患者血清を作用させることで認められるBNB in vitroモデルのバリアー破綻の程度が,臨床症状の重症度や神経幹部の脱髄所見などのCIDP臨床パラメーターと有意に相関することを明らかとした(manuscript in submission).次にMMN患者を対象とした研究では,① MMN患者血清を作用させるとBNB in vitroモデルの電気抵抗値が低下し,claudin-5蛋白量が低下し,細胞接着因子であるVCAM-1蛋白量が増加すること,② MMN患者血清中に含まれるBNB構成内皮細胞に対する自己抗体と血清を作用させることでBNB内皮細胞からautocrineに放出されるVEGFがBNB破綻を惹起させる重要な分子であること,を明らかとした (J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013; 7. doi: 10.1136/jnnp-2013-305405 in press). 本研究によりCIDP/MMNでのBNB破綻の分子メカニズムが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
この2年間で当初計画していた慢性炎症性脱髄性根ニューロパチー患者血清と多巣性運動ニューロパチー患者血清がどのような分子メカニズムで血液神経関門を破綻させるかについて明らかにするという研究目的が達成できたため,概ね順調に研究は進行していると考えた.
今後,慢性炎症性脱髄性根ニューロパチー(CIDP)患者血清や多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者血清が血液神経関門(BNB)を構成するペリサイトに及ぼす影響を解析する.また,CIDP/MMN患者血清中に含まれるBNBを破綻させる原因物質を特にサイトカインや自己抗体に焦点を絞って同定する.患者血清や健常成人/疾患コントロール血清を作用させ,BNBから局所的に放出される炎症性サイトカイン,ケモカインをBioplexを用いて網羅的に解析する.さらにBNB破綻を生じうる未知の自己抗体を2次元電気泳動法/蛋白質量解析の手法を用いて同定する.これらの知見がCIDP/MMNにおけるBNB破綻分子メカニズムの全容解明につながる.
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