研究概要 |
私たちは脱髄性疾患の最重症亜型であるBalo病の急性期病巣のleading edgeでは脱髄に先行してまずアストロサイトのコネキシンCx43が広汎に脱落し、次いでオリゴデンドロサイトのCx32やCx47が脱落し、最後にその他の髄鞘蛋白が脱落することを見出した(Masaki et al, Acta Neuropathol, 2012)。同様なCx群の広範囲での脱落は、多発性硬化症や、抗aquaporin-4 (AQP4)抗体の出現と血管周囲性の免疫グロブリン・補体沈着を特徴とする視神経脊髄炎(neuromyelitis optica, NMO)の急性期病巣でも認めることを世界で初めて報告した(Masaki et al, PLoS One, 2013; 2012ECTRIMS欧州MS国際学会で口演発表)。Cxは細胞間で接合してgap junction (GJ) channelを形成する。GJ channelを介した種々の物質の出入によりグリアはシンシチウムを形成している。それ故、私たちは病巣形成早期からのグリア細胞間の機能的連絡障害(グリアシンシチウムの破綻)がヒト脱髄性疾患の病態進展に極めて重要であることを指摘した。さらに、グリアシンシチウムの破綻は神経変性の進行過程にも関与する可能性を考え、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスであるSOD1変異マウスにおけるCxの発現変化を検討した。その結果、オリゴデンドロサイトのCx47やCx32が脊髄灰白質で広汎に内在化や脱落が生じていることを見出し報告した(Cui and Masaki et al, J Neuroinflammation, 2014)。
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