研究課題
若手研究(B)
本年度は、酸化的DNA損傷サイクロプリンに対する新規モノクローナル抗体(CdA-1)の性能解析を行った。IgG2a(κ)に属する本抗体の結合特異性を酵素標識免疫法(ELISA)で検討した結果、抗原に使用した (5'S)-cyclo-dA-DNAに強く結合するが、正常DNA、紫外線照射DNA、AAF-DNAおよび8-oxo-dA等には結合しなかった。また、サイクロプリンの形成が報告されている低酸素下・高線量X線によるDNA照射を行ったところ、線量依存的に抗体結合が増加した。さらに、同様の照射をDNAやoligo-dAに行った場合は抗体結合が見られたが、oligo-dGには見られなかった。それ故、本抗体はDNA中のサイクロプリンの内、cyclo-dGには結合せず、(5'S)-cyclo-dAに特異的に結合することが示唆された。本抗体は10万塩基中1個から20個の (5'S)-cyclo-dAを含む4種類のオリゴDNAに対し直線的に結合を増加させることから、サンプルDNA中の絶対損傷量の測定に応用できることがわかった。現時点で、10万塩基中1個の(5'S)-cyclo-dAを定量できる感度を持つ。そこで、ヒドロキシラジカルを効率的に発生できる過酸化水素、銅イオン、およびアスコルビン酸を3時間処理したDNA中の損傷を測定した結果、処理濃度依存的に(5'S)-cyclo-dAが誘発され、最大10万塩基中60個に達することがわかった。また、(5'S)-cyclo-dAオリゴを導入したヒト骨肉腫細胞(USOS)を固定し、蛍光免疫染色を行った結果、(5'S)-cyclo-dA特異的な蛍光シグナルを観察できた。今後、本検出系の高感度化およびXP-Aマウス臓器における(5'S)-cyclo-dAの測定に取り組む予定である。
3: やや遅れている
サイクロプリンの検出系の高感度化に手こずっている。細胞に過酸化水素、銅イオン、およびアスコルビン酸を処理し、ELISAと蛍光免疫染色を用いてゲノムDNA中からサイクロプリンの検出を試みているが、まだ実験系が確立していない。
サイクロプリンの検出系を高感度化させるため、(5'S)-cyclo-dA、(5'R)-cyclo-dA、(5'S)-cyclo-dG、(5'R)-cyclo-dG、計4種類の損傷を認識する新規の特異モノクローナル抗体を作製する。DNAにサイクロプリンを誘発させる実験系は確立できたので、これを基に抗原を作製すればCdA-1より親和性、特異性の高い抗体を獲得できると考えられる。この新規抗体を用いて、100万塩基中に1個の(5'S)-cyclo-dAを定量できる実験系を開発し、XP-Aマウス臓器におけるサイクロプリンの測定に取り組む予定である。
該当なし
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放射線生物研究
巻: 47 ページ: 112-125
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 109 ページ: 12064-12069
10.1073/pnas.1207210109