色素性乾皮症A群(XP-A)は常染色体劣性遺伝病であり、DNA損傷修復機構の中のヌクレオチド除去修復(NER)を欠損する。高頻度皮膚発がんに加え、運動失調や知能低下など進行性の神経障害を発症するが、後者の機序は不明のままである。仮説として、内因性のNER型DNA損傷である酸化的DNA損傷サイクロプリンが長期間蓄積し、重要な遺伝子の発現阻害により神経細胞を死に追いやることが原因であるとされている。そこで、我々はサイクロプリン特異的モノクローナル抗体(CdA-1)を作製し、この損傷が神経細胞などに蓄積しているかを検討した。 これまでの解析の結果、CdA-1抗体はDNA中のサイクロアデノシン(cyclo-dA)に対し特異結合を示し、サンプルDNA中のcyclo-dA量と抗体のcyclo-dAへの結合能との間にきれいな直線関係が見られた。また、500 ng DNAサンプル中、10<5>塩基あたり1個の損傷を検出する感度を示した。 本年度は、約6ヶ月齢および約24ヶ月齢のXP-Aおよび野生型マウス(各3匹)の臓器(肝臓、腎臓、精巣、脳)中のcyclo-dAの測定を試みた。その結果、いずれの臓器でも、両マウス間でcyclo-dA蓄積量の有意な差異は見られなかった。しかしながら、検出感度を約10倍増強し、肝臓中のcyclo-dAを再測定した結果、XP-Aマウスは野生型マウスに比べ蓄積量が多いことがわかった。XP-A患者および健常人由来の剖検脳組織切片を使用した神経細胞内のcyclo-dAの可視化も試みているが、まだ抗原賦活化など基本的条件設定の段階である。
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