ミトコンドリアの膜電位を低下させると、PINK1のキナーゼ活性依存的にParkinのユビキチン様ドメインの65番目セリン残基(Ser65)がリン酸化修飾されることを見出し、このリン酸化がPINK1/Parkin依存的なマイトファジーに関与することを報告した。そこで、このPINK1によるParkinのSer65リン酸化修飾が、生体内でどのように作用するのかをPINK1ノックアウトショウジョウバエにParkin過剰発現ショウジョウバエを掛け合わせて、表現型を観察した。PINK1のノックアウトショウジョウバエでは飛翔筋のミトコンドリアが変性するが、Parkin野生型、及び非リン酸化型であるSer65Alaの過剰発現でその変性が回復した。また、模擬リン酸化型であるSer65Gluの発現においても回復するが、その形態は数珠状で、ミトコンドリアの長さは有意に短くなった。また、このミトコンドリアの形態変化がParkinのE3活性に依存するかどうかを確認するため、分解系の基質の一つであるMfn1の発現量を指標として測定した。その結果、野生型、及び非リン酸化型ではコントロール群と比較すると減少し、模擬リン酸化型においては顕著に減少した。非リン酸化型においては、野生型と比較するとその減少は低下した。これらの結果より、生体内におけるPINK1を介したParkinのリン酸化修飾は、ParkinのE3活性を制御している可能性が示唆され、その結果、ミトコンドリア形態に影響を及ぼしていると考えられた。さらに、ATPと複合体Iを指標としたミトコンドリア機能、及びクライミングアッセイを指標とした運動能力を測定したところ、PINK1欠失による機能低下をParkin野生型、非リン酸化型は回復させるが、模擬リン酸化体においては一時的に回復することを明らかにした。これらのことから、Parkinのリン酸化修飾は、PINK1欠失によるミトコンドリアの機能低下においても影響を及ぼすことを明らかにした。
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