研究課題/領域番号 |
24790897
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
仙石 錬平 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40385331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 嗅球 / パーキンソン病 / パーキンソン症候群 / 頭部MRI / volumetry / 匂い検査 |
研究実績の概要 |
パーキンソン病関連疾患(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)からパーキンソン病を抽出するのに補助検査として有用なものは何か。我々は、パーキンソン病において肉眼的に嗅球が萎縮することに着眼し、対象症例患者の嗅球体積をMRIで計測評価する方法を開発した。さらに我々は、morphologyとしての嗅球体積値とphysiologyとしての匂い検査、またはMIBG心筋シンチグラフィを組み合わせることが、上記疾患の鑑別精度をあげることを見出した。上記検討により1)嗅球体積と匂い検査とは相関傾向を示すことが判明し、2)パーキンソン病を含むパーキンソン病関連疾患と健常者の中では、唯一パーキンソン病が嗅球体積萎縮を有意に示すことが確認できた。嗅球体積のカットオフ値は270mm3未満であった。日本人向けの匂い検査(Odor Smell Identification Test for Japanese; OSIT-J)のカットオフ値は8点未満であった。この2項目の条件を満たすとパーキンソン病を含むパーキンソン病関連疾患の中で90%の症例がパーキンソン病であることが示された。また、嗅球体積とMIBG心筋シンチグラフィの関係は、嗅球体積のカットオフ値は前述同様の270mm3未満で、MIBG心筋シンチグラフィーのH/M比のカットオフ値は1.8であった。同様に両者を組み合わせるとパーキンソン病関連疾患の鑑別精度は上昇することを明らかにした。上記結果は2015年に英文誌上(Parkinsonism Relat Disord)にて報告済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のごとく、英文誌上にパーキンソン病では嗅球体積を頭部MRIを用いて測定することがパーキンソン病関連疾患の鑑別において有用であることを示した。さらに、現状において実施されている日本人向けの嗅覚検査(12種の臭素を使用)の簡易版を作成中である。また、頭部MRIを用いた嗅球体積測定を簡易化するソフトを開発中である。
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今後の研究の推進方策 |
日本人向けに開発された匂いテスト(OSIT-J)は、12個の匂いの元(臭素)を嗅がせる試験であるが、12個を嗅がせるのに要する時間は長く、臨床現場としては向いていない。そのため今回われわれは、数個の臭素で簡便に鑑別が出来ないかを検討している。現在4個の臭素でスクリーニングが出来る結果を得ている。また、上述の頭部MRIによる体積測定法は、1mmスライスの画像を1枚1枚フリーハンドで測定するため1症例に対し数10分の時間を要する。そのため、頭部MRI嗅球体積測定方法の簡略化を目指し、体積測定ソフトの開発を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在進行している頭部MRIでの嗅球体積測定方法が簡便になるように解析ソフトを開発中であり、そのために次年度使用額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
1)解析ソフト開発のためのコンピューター購入、解析ソフト開発料。 2)成果発表のための国内学会出席のための旅費・参加費、国際学会出席のための外国旅費・参加費。 3)得られた成果を誌上発表するための英文校正謝礼、論文投稿料。
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