神経障害性疼痛の特徴は、アロディニアを始めとする疼痛過剰反応及び、末梢~中枢神経系の様々なレベルでの感作による病態機序の複雑化にあり、難治性慢性疼痛の一因となる。近年考案された表皮内電気刺激法は疼痛に関連する神経(Aδ線維及びC線維)を選択的かつ簡便に刺激することが可能であり、疼痛関連誘発電位による評価は中枢性疼痛機序に対する新たな電気生理学的評価手法として期待される。当研究は上記知見に基づき、神経障害性疼痛における中枢神経系での疼痛機序・異常反応を明らかにし、慢性疼痛の客観的評価および新規治療創出の為の基盤を構築する事を目的とした。 本年度は、神経障害性疼痛患者において上記手法を用いて疼痛関連誘発電位を評価、健常群との比較により疼痛患群での特徴を解析・検討した。また疼痛症状との相関を評価し、上記手法において客観的疼痛指標となりうるパラメータの探索を行った。対象は非脱髄性末梢神経障害もしくは脊髄・脊椎疾患に伴う神経障害性疼痛患者13名と正常対照17名で、疼痛群では健常群と比較しAδ振幅では軽度低下傾向を認めるもC振幅は保たれる傾向にあった。また、Aδ刺激反応に対するC線維刺激反応(C/Aδ 振幅比)は疼痛群で健常群と比べ有意に増大した。また、疼痛症状の強い群(VAS60以上)において、正常対照・軽症疼痛群と比較し、C/Aδ振幅比は有意に増大した。Aδ刺激に対するC線維刺激反応の増大の所見は、Aδ線維の脱抑制に伴うC線維反応の増大を示唆する可能性が考えられ、以上の結果から、表皮内電気刺激法を用いた疼痛関連電位検査は神経障害性疼痛の病態解析や疼痛の客観的評価に有用な可能性があると考えられた。
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